物性科学ハンドブック ―概念・現象・物質―

東京大学物性研究所(編)

東京大学物性研究所(編)

定価 28,600 円(本体 26,000 円+税)

A5判/1044ページ
刊行日:2016年05月30日
ISBN:978-4-254-13112-3 C3042

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内容紹介

物性科学研究の諸領域(物性理論,物性実験,新物質開発)におけるこれまでの重要な成果から最先端の話題までを,世界トップレベルの研究機関である東大物性研究所のスタッフが解説。物性科学の全体像を丁寧に俯瞰する最新リファレンス。〔内容〕物性理論[考え方,第一原理からの物性理論,モンテカルロ法,新潮流]/物性実験[核磁気共鳴法,電気伝導,ナノスケール量子系,光物性,強磁場開発と物性測定,中性子散乱実験]/新物質開発[強相関電子系の物質開発]

編集部から

物性の解明から新物質開発へと展開する物性科学研究の俯瞰図を描く!
○東京大学物性研究所の研究者を中心に研究の第一線で活躍する執筆陣による最新ハンドブック.
○「物性理論」「物性実験(小型施設/大型設備)」「新物質開発」の全4部・13章+序章から構成.
○各章では主要テーマの基礎概念,理論,実験手法,最新の知見や展望までを体系的に解説.

目次

まえがき
0. 序にかえて―物質科学の系譜と展開
 0.1 はじめに
 0.2 自然理解と物質科学の系譜
  0.2.1 始原物質
  0.2.2 錬金術から近代化学へ
  0.2.3 磁石と磁力
  0.2.4 近代的原子論
 0.3 物性科学の位置づけ
  0.3.1 現代社会と科学・技術
  0.3.2 基礎科学としての物性物理学
  0.3.3 物性物理学の構成と物性研究の展開
 0.4 本書の構成
 文献
第I部 物性理論
1.物性理論の考え方|超伝導を例として
 1.1 金属電子論の基礎
  1.1.1 多電子問題と1 体近似
  1.1.2 ブロッホの定理
  1.1.3 バンド構造と金属・絶縁体の区分
  1.1.4 自由電子気体モデル
  1.1.5 ハバードモデル
 1.2 BCS型の超伝導
  1.2.1 超伝導現象
  1.2.2 ギンツブルク{ランダウ(GL)理論
  1.2.3 クーパー対形成
  1.2.4 BCS理論
  1.2.5 電子格子相互作用と引力の起源
 1.3 強相関電子系の超伝導
  1.3.1 重い電子系の超伝導と銅酸化物高温超伝導体
  1.3.2 一般化されたBCS 理論
  1.3.3 一般化されたGL 理論
 1.4 量子相転移と強相関電子系の超伝導
  1.4.1 金属磁性の平均場近似
  1.4.2 金属磁性のスピンの揺らぎの理論
  1.4.3 量子臨界性と超伝導
 文献
2.第一原理からの物性理論
 2.1 物性理論概観
  2.1.1 自然の階層構造と物性理論
  2.1.2 第一原理系のハミルトニアン
  2.1.3 第一原理系を取り扱う理論手法
  2.1.4 第一原理計算の狙い
 2.2 波動関数的アプローチ
  2.2.1 水素原子と電子軌道の古典力学的イメージ
  2.2.2 陽子の質量効果と断熱近似
  2.2.3 ヘリウム原子:ハートリー{フォック近似と自己相互作用補正
  2.2.4 相関効果とジャストロウ因子
  2.2.5 交換効果とフント則
  2.2.6 水素分子とハイトラー{ロンドン理論
  2.2.7 水素分子における化学結合の本質
  2.2.8 断熱ポテンシャルと2陽子系の運動
  2.2.9 閉じ込め分子模型と高圧下の固体水素
 2.3 場の量子論的アプローチ
  2.3.1 第2量子化と電子場の生成・消滅演算子
  2.3.2 断熱近似下の価電子イオン複合系
  2.3.3 電子ガス系とそのハートリー{フォック近似の状態
  2.3.4 動径分布関数:フェルミホールとクーロンホール
  2.3.5 基底状態エネルギーと相関エネルギー
  2.3.6 圧縮率とスピン帯磁率: 電子ガス系とアルカリ金属の比較
  2.3.7 誘電異常と超臨界状態のアルカリ金属流体
  2.3.8 GWΓ法:動的構造因子と1 電子スペクトル関数
 2.4 密度汎関数論的アプローチ
  2.4.1 ホーエンバーグ-コーンの密度汎関数原理
  2.4.2 ホーエンバーグ-コーンの密度変分原理と普遍汎関数
  2.4.3 コーン{シャムの方法と相互作用のない参照系
  2.4.4 実用的な交換相関エネルギー汎関数とLDA
  2.4.5 1原子埋め込み電子ガス系とスピン偏極
  2.4.6 不純物アンダーソン模型:近藤効果から近藤問題へ
  2.4.7 陽子埋め込み電子ガス系:第一原理からの近藤問題
 文献
3.モンテカルロ法と量子臨界現象
 3.1 計算物理学による物理現象の「理解」
 3.2 計算物理学の展開
 3.3 モデル計算の手法
  3.3.1 有限系の数値厳密解
  3.3.2 級数展開
  3.3.3 分子動力学シミュレーション
  3.3.4 連続体モデルと有限要素法
  3.3.5 新しい方法論
 3.4 モンテカルロ法
  3.4.1 単純な確率的求積法
  3.4.2 マルコフ鎖モンテカルロ法
  3.4.3 詳細釣り合いとエルゴード性
  3.4.4 収束性
  3.4.5 「自由エネルギー」の単調増加性
  3.4.6 クラスタ更新
 3.5 経路積分表示による量子モンテカルロ法
  3.5.1 ループ分割による状態更新
  3.5.2 ワームによる状態更新
 3.6 臨界現象の一般論と有限サイズスケーリング
 3.7 ボース凝縮―U(1)対称性のある場合―
  3.7.1 XY モデルとボース-ハバードモデル
  3.7.2 臨界現象(d > 2)
  3.7.3 実験―シングレットダイマー物質―
  3.7.4 臨界現象(1<d<2)
  3.7.5 フラストレーションの効果
 3.8 シングレットダイマー系の臨界現象―SU(2)対称性のある場合―
  3.8.1 ボンド変調のある反強磁性ハイゼンベルクモデル
  3.8.2 コヒーレント表示
  3.8.3 トポロジカル数とハルデーンギャップ
  3.8.4 2 次元以上の場合
  3.8.5 数値計算
 3.9 新しいタイプの臨界現象
  3.9.1 SU(N) ハイゼンベルクモデル
  3.9.2 脱閉じ込め転移
  3.9.3 数値計算
 文献
4.物性理論の新潮流
 4.1 はじめに
 4.2 量子臨界現象
 4.3 物性物理学におけるトポロジー
  4.3.1 トポロジーとは?
  4.3.2 トポロジカルな現象としての整数量子ホール効果
  4.3.3 ディラックフェルミオン
  4.3.4 端状態
  4.3.5 トポロジカル絶縁体
 文献
第II部 スモールサイエンスとしての物性実験
5.基礎の物性実験―比熱・磁化測定からわかること
 5.1 比熱測定
  5.1.1 格子振動と比熱
  5.1.2 電子系の比熱
  5.1.3 核比熱
 5.2 磁化測定
  5.2.1 磁化および帯磁率の一般論
  5.2.2 さまざまな磁化
  5.2.3 磁化および磁場・温度相図に関する熱力学関係式
 5.3 磁化測定における最近の発展
 文献
6.核磁気共鳴法
 6.1 核磁気共鳴の基礎と超微細相互作用
  6.1.1 磁気共鳴の原理
  6.1.2 固体中の超微細相互作用,4 重極相互作用
  6.1.3 NMRで見る固体の性質
 6.2 NMRスペクトルとスピン・電荷・格子の局所構造
  6.2.1 常磁性状態におけるNMR スペクトル
  6.2.2 磁気秩序状態におけるNMR スペクトル
  6.2.3 f 電子系の多極子秩序とNMR スペクトル
 6.3 核磁気緩和現象と電子・格子のダイナミクス
  6.3.1 核スピン-格子緩和率
  6.3.2 スピンエコー減衰率
  6.3.3 フォノンによる緩和の例,ラットリングと超伝導
 文献
7.電気伝導―低次元電子系の量子伝導
 7.1 はじめに
 7.2 固体中の電子動力学
  7.2.1 有効質量近似
  7.2.2 半古典近似
  7.2.3 磁場中の電子状態
  7.2.4 ベリー位相と異常速度
  7.2.5 スピン軌道相互作用
 7.3 電気伝導の扱い
  7.3.1 ドルーデ理論
  7.3.2 ボルツマン方程式
  7.3.3 久保公式
 7.4 電気伝導とフェルミオロジー
  7.4.1 角度依存磁気抵抗振動
  7.4.2 量子振動効果
 7.5 量子ホール効果
  7.5.1 2次元電子系
  7.5.2 整数量子ホール効果
  7.5.3 量子ホール効果のゲージ理論
  7.5.4 ブロッホ電子系の量子ホール効果
  7.5.5 エッジ描像とバルク・エッジ対応
  7.5.6 分数量子ホール効果
  7.5.7 複合粒子描像
 7.6 グラフェンと固体中ディラック電子系
  7.6.1 ディラック方程式
  7.6.2 グラフェンの電子構造
  7.6.3 ベリー位相と後方散乱の消失
  7.6.4 ランダウ準位と量子ホール効果
  7.6.5 歪誘起ゲージ場
  7.6.6 2層グラフェン
  7.6.7 固体中ディラック電子系
 7.7 まとめと展望
 文献
8.ナノスケール人工量子系
 8.1 ナノスケール量子系
  8.1.1 量子構造
  8.1.2 半導体人工構造
  8.1.3 半導体量子構造の光学現象
  8.1.4 コヒーレント輸送現象
  8.1.5 単電子帯電効果と量子ドット
  8.1.6 量子コヒーレンス・デコヒーレンスと非平衡伝導
  8.1.7 量子ドットを舞台とする物理現象
  8.1.8 半導体複合ナノスケール系
 8.2 スピントロニクス
  8.2.1 スピントロニクスとは
  8.2.2 磁性の基礎事項
  8.2.3 スピン輸送現象
  8.2.4 スピン注入・スピン緩和・スピン流生成
  8.2.5 微小磁性体
  8.2.6 スピン情報処理
 文献
9.その他の物性実験
 9.1 超低温物性
  9.1.1 低温生成
  9.1.2 超流動4He
  9.1.3 超流動3He
 9.2 走査トンネル顕微鏡による表面研究
  9.2.1 固体表面研究
  9.2.2 走査トンネル顕微鏡の動作原理
  9.2.3 局所電子状態密度の測定
  9.2.4 探針による原子操作
  9.2.5 表面電子波動関数の観察とその分散関係の測定
  9.2.6 表面原子構造の解明
  9.2.7 探針電流による表面構造の可逆制御
  9.2.8 おわりに
 文献
第III部 大型施設を使った物性実験
10. 光物性実験
 10.1 序論
  10.1.1 序論
  10.1.2 レーザー
  10.1.3 シンクロトロン放射
  10.1.4 自由電子レーザー
  10.1.5 本章の構成
 10.2 光と物質の相互作用
  10.2.1 光学応答の現象論
  10.2.2 古典論とローレンツモデル
  10.2.3 光と物質の相互作用の半古典論
 10.3 真空紫外|軟X線での物性実験
  10.3.1 双極子遷移
  10.3.2 真空紫外~軟X 線での物性実験
  10.3.3 発光
  10.3.4 より高度な実験
 10.4 非線形光学
  10.4.1 光パルスの伝搬
  10.4.2 摂動論的な非線形光学
 10.5 ヘテロ構造・ナノ構造デバイス光科学
  10.5.1 はじめに
  10.5.2 半導体低次元系の光学遷移の基礎
  10.5.3 半導体光デバイス(レーザー)の基礎
  10.5.4 低次元半導体量子構造の光学物性
 文献
11. 磁場開発と物性測定
 11.1 緒言
  11.1.1 はじめに
  11.1.2 磁場に関する基礎事項
 11.2 強磁場下の電子
  11.2.1 単位系について
  11.2.2 1電子系の問題
  11.2.3 多電子系の問題
 11.3 パルス強磁場発生技術
  11.3.1 非破壊型
  11.3.2 破壊型
 11.4 定常強磁場および非破壊パルス磁場下における物性測定
  11.4.1 直流測定
  11.4.2 低周波交流測定
  11.4.3 高周波交流測定
  11.4.4 磁化測定
  11.4.5 構造測定
 11.5 破壊パルス強磁場における物性測定
  11.5.1 表皮効果とインピーダンスマッチング
  11.5.2 磁場計測技術
  11.5.3 電磁ノイズ
  11.5.4 物性測定技術
 11.6 強磁場下での物性
  11.6.1 量子スピン
  11.6.2 高温超伝導体の強磁場物性研究
  11.6.3 銅酸化物超伝導体の量子振動
  11.6.4 半金属の強磁場物性
  11.6.5 重い電子
  11.6.6 構造物性
 文献
12. 中性子散乱実験とソフトマター
 12.1 はじめに
 12.2 中性子の性質
  12.2.1 中性子の発生と種
  12.2.2 中性子の性質
  12.2.3 電磁波,電子線,および中性子線のエネルギー分散比較
 12.3 中性子の散乱
  12.3.1 散乱断面積
  12.3.2 単一核の散乱理論
  12.3.3 フェルミの疑似ポテンシャルと散乱長
  12.3.4 非干渉性散乱
  12.3.5 弾性散乱と非弾性散乱
  12.3.6 散乱長密度
  12.3.7 多数の核からの散乱
  12.3.8 散乱長密度分布関数と相関関数
  12.3.9 透過率
 12.4 中性子散乱装置と測定手法
  12.4.1 小角散乱
  12.4.2 中性子反射率
  12.4.3 非弾性散乱
 12.5 高分子
  12.5.1 領域I: 希薄系―単一鎖状高分子の統計力学―
  12.5.2 回転半径とDebye の散乱関数
  12.5.3 領域II: 準濃厚系―C 定理―
  12.5.4 領域III: 濃厚系およびメルト―ポリマーブレンド―
  12.5.5 ブロック共重合体
 12.6 ブレークスルー研究
  12.6.1 高分子鎖の広がり
  12.6.2 高分子ブレンドの臨界現象
  12.6.3 同位体高分子ブレンドの量子相分離
  12.6.4 スピンエコー法による高分子メルトのレプテーション運動の直接観察
  12.6.5 反射率測定によるブロック共重合体薄膜の規則構造研究
  12.6.6 高分子ゲルの体積相転移
  12.6.7 コントラスト変調法による界面活性効果の研究
 12.7 トピックス
  12.7.1 高分子溶液の圧力・温度誘起相分離
  12.7.2 脂質膜中の両親媒性分子のキネティクス
  12.7.3 シシカバブ構造
  12.7.4 イオンの選択溶媒和による水/有機溶媒の膜状構造形成
  12.7.5 新奇高強力ゲル
 12.8 将来の展望
  12.8.1 中性子散乱技法の発展
  12.8.2 ソフトマターサイエンス
 12.9 結語
 文献
第IV部 新物質開発
13. 強相関電子系の物質開発
 13.1 分子性物質
  13.1.1 分子性導体の発展の歴史―低次元導体から強相関電子系超伝導体まで―
  13.1.2 強相関電子系分子性物質開発の手法
  13.1.3 トピックス
  13.1.4 強相関電子系分子性結晶のまとめと展望
 13.2 遷移金属酸化物における物質開発
  13.2.1 遷移金属酸化物の特徴
  13.2.2 d電子
  13.2.3 遷移金属酸化物における格子
  13.2.4 様々な物性
  13.2.5 量子スピン系
  13.2.6 フラストレーションとカゴメ格子
  13.2.7 5d パイロクロア酸化物
 13.3 金属間化合物における強相関電子系:重い電子系
  13.3.1 はじめに
  13.3.2 量子臨界現象,スピン揺らぎ,フェルミ液体,異常金属
  13.3.3 金属間化合物の合成法
  13.3.4 重い電子系における量子臨界現象
  13.3.5 Pr 系重い電子化合物における非磁性軌道揺らぎと異常金属,超伝導
  13.3.6 さいごに
 文献
索引

執筆者紹介

編集委員
家 泰弘 前 東京大学物性研究所/日本学術振興会
高田 康民 前 東京大学物性研究所


執筆者(執筆順)
家 泰弘 日本学術振興会
上田 和夫 東京大学名誉教授
高田 康民 東京大学物性研究所
川島 直輝 東京大学物性研究所
押川 正毅 東京大学物性研究所
榊原 俊郎 東京大学物性研究所
瀧川 仁 東京大学物性研究所
長田 俊人 東京大学物性研究所
勝本 信吾 東京大学物性研究所
河野 公俊 理化学研究所
小森 文夫 東京大学物性研究所
松田 巌 東京大学物性研究所
秋山 英文 東京大学物性研究所
板谷 治郎 東京大学物性研究所
金道 浩一 東京大学物性研究所
松田 康弘 東京大学物性研究所
徳永 将史 東京大学物性研究所
柴山 充弘 東京大学物性研究所
森 初果 東京大学物性研究所
廣井 善二 東京大学物性研究所
中辻 知 東京大学物性研究所

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