生体防御医学事典

鈴木 和男(監修)

鈴木 和男(監修)

定価 16,500 円(本体 15,000 円+税)

B5判/376ページ
刊行日:2007年05月20日
ISBN:978-4-254-31090-0 C3547

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内容紹介

生体が「自己のからだをまもる」とは,どのようなメカニズムで,どのような作用が行われることなのかを解説する。分子レベル・器官レベルから個体レベルまでの最新の知見を,項目ごとに読み切り形式でわかりやすく記述し,健康の維持・管理・増進および疾病への対応・克服の指針を提示する。〔内容〕感染症と生体防御/生体防御異常からみた免疫機構/自然免疫の機構と細胞/サイトカイン/補体/生体防御に必要な活性酸素産生機構/生体防御異常が誘発する難治性疾患/他

編集部から

 生体が自己をまもるしくみを解明して,生体の存続(人間個人レベルでいえば,「健康で文化的な生活」を享受できること)に役立てよう,というのが生体防御医学の趣旨です。
 「自己をまもる」ことを簡単に考えれば,自己でないもの=非自己=異物を排除すればよさそうに思えますが,そこで「自己とは何か」という大問題が発生します。生体が食糧として摂取するものは非自己=異物であり,生体の内部で自然に成長するものは自己です。つまり,癌細胞も自己であるということになります。
 防御すべき生体は個体レベルでなければ存続を考慮する意味がないのですが,そのためには,器官レベル,細胞レベル,分子レベルで考えていかなければならない,ということになります。
 これらの防御機能は,哺乳動物や鳥類に限ったことではなく,無脊椎動物や昆虫にいたる広い動物界にも確認されており,生体を防御する機能は生存にかかわる必須の機能として,「生体防御」がはらたいています。また,植物も同じように,生体防御機構が働いています。このようにひろく生物全体の視点から生体の防御機能を考えて研究すること,「生体防御/Host Defense」という分野の研究が進んできました。とりわけ,医学分野においてその重要性は高く,多くの施設で研究が進められています。
 本書は,最新の研究成果について「感染症(ウイルス,細菌,真菌,寄生虫,予測シミュレーション)」,「微生物の産生物質」,「生体防御異常からみた免疫機構」,「自然免疫の機構と細胞」,「サイトカイン」,「補体」,「生体防御に必要な活性酸素産生機構」,「各種生物の生体防御:微生物,植物,動物」,「生体防御異常が誘発する難治性疾患」および「新技術の開発」の広い分野にわたって,これらの研究にたずさわる先生方に背景と現在の先端研究について,わかりやすくご執筆いただいたものです。
 医学部,生命科学系学部・学科,医療関連学部・学科の学生,大学院生,研究者,バイオ関連企業の技術者・研究者,医療・保健・福祉関連業務に携わる方々,厚生行政に携わる方々を中心に,広く読まれて欲しいものです。(小畑)

目次

1 生体防御研究の捉え方
2 自己のからだをまもる生体防御
3 バイオテロと天然痘

Ⅰ 感染症( ウイルス, 細菌, 真菌)
4 初期感染防御の分子機構
5 ウイルス感染症と抗インターフェロン
6 プリオン感染の制御

Ⅱ 感染症( 寄生虫)
7 巨大寄生体が宿主から排除される仕組み
8 寄生虫感染とアレルギー
9 寄生虫ミトコンドリアにおける低酸素適応機構
10 赤内型マウスマラリア感染における自然免疫応答

Ⅲ 感染症( エイズ感染と生体防御)
11 HIV-1 の細胞傷害性T 細胞からの逃避機構
12 IgM 抗体とHIV 感染防御
13 エイズワクチン
14 HIV 感染症の治療と薬剤耐性

Ⅳ 感染症( 予測シミュレーション)
15 感染症シミュレーションの考え方
16 院内感染のモデリング
17 感染症伝播のシミュレーション
18 感染症流行の数理モデル

Ⅴ 微生物の産生物質
19 細菌の定着, 侵入, 細胞内寄生因子
20 スーパー抗原性毒素と感染症

Ⅵ 生体防御異常からみた免疫機構
21 アレルギー性気道炎症とTLR 4
22 アレルギー疾患におけるDNA 免疫療法の開発
23 感染防御とアレルギーにおける粘膜免疫の関わり
24 環境化学物質による感染・アレルギーの修飾
25 肺炎の病態と免疫応答
26 腸管免疫と食品免疫学研究

Ⅶ 自然免疫の機構と細胞
27 マクロファージの多様性とその起源
28 自然免疫に登場した新たなToll 様受容体
29 好中球myeloperoxidase の役割
30 肝再生:hematolymphoid system としての機能
31 マウス樹状細胞の分化機構
32 ヒト骨髄系血液細胞と細胞内刺激伝達機構
33 好中球の機能調節
34 デクチンと感染防御

Ⅷ サイトカイン
35 サイトカインによる制御と治療への応用
36 樹状細胞の遊走におけるケモカインの役割
37 TNF-αの生理活性と病態との関わり
38 遊走活性測定の意義

Ⅸ補体
39 補体活性化制御
40 ヒト血清レクチンによる補体活性化

Ⅹ 生体防御に必要な活性酸素産生機構
41 活性酸素産生の活性化の分子機構
42 活性酸素産生酵素遺伝子の発現調節
43 微生物感染とNOX
44 神経変性疾患と酸化ストレス
45 活性酸素産生異常の治療

ⅩⅠ 各種生物の生体防御: 微生物, 植物, 動物
46 カブトガニの異物認識と排除
47 植物の生体防御
48 魚類の自然免疫関連遺伝子
49 魚類の生体防御の分子機構
50 鳥類の生体防御機構
51 生体防御機構の進化

ⅩⅡ 生体防御異常が誘発する難治性疾患
52 膠原病― オーバービュー
53 血管炎の病態と治療
54 膠原病の病態と治療
55 川崎病の治療
56 真菌多糖により惹起されるマウス血管炎モデル
57 川崎病の病理
58 ANCA 関連腎炎の病態とモデルマウスでの知見
59 血管炎の発症に関わる分子と好中球
60 ANCA 関連血管炎におけるサイトカイン異常と病態
61 感染とサイトカイン
62 慢性疾患に関わる遺伝子
63 ARDS の臨床
64 炎症における出血と血栓

ⅩⅢ 新技術の開発
65 腎糸球体細胞再生のための共培養法
66 免疫不全症に対する造血幹細胞遺伝子治療
67 花粉シェルター
68 活性酸素種の人工的生成と応用

索引

執筆者紹介

【監修】
鈴木和男
【編集委員】
山本健二,吉開泰信,光山正雄,中山俊憲,赤川清子,瀬谷司,上出利光,岡田則子,住本英樹,川畑俊一郎,朽津和幸,小林茂人,大野尚仁
【執筆者(五十音順)】
赤川清子,安達禎之,荒谷康昭,市川大樹,猪原登志子,上芝秀博,上出利光,内山竹彦,宇野賀津子,大川原明子,大野尚仁,岡崎富男,岡田則子,岡田秀親,奥田研爾,小澤敬也,小野寺節,尾又一実,垣内史堂,笠原忠,桂義元,加藤篤,金井孝夫,金ヶ嵜史朗,金子正裕,亀岡洋祐,川上和義,河内正治,川畑俊一郎,北潔,清野宏,朽津和幸,熊沢義雄,熊取厚志,倉文明,倉田毅,小林茂人,小林富美惠,佐伯圭一,阪口雅弘,篠田香織,杉浦亙,鈴木和男,鈴木章一,住本英樹,瀬谷司,高橋啓,田村直人,長尾朋和,中西潮,中西照幸,布井博幸,橋本博史,八村敏志,平橋淳一,廣田好和,藤田禎三,藤巻秀和,藤原守,馬渕綾子,丸山治彦,水上智之,光山正雄,武曾惠理,安田英典,山内明,山下政克,山本健二,湯尾明,湯村和子,吉開泰信,吉倉廣,樂間毅,和合治久,渡辺直煕,王碧昭

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