サイトカインストーム症候群 ―メカニズムと治療―

Randy CronEdward Behrens(編)/森 雅亮清水 正樹(監訳)

Randy CronEdward Behrens(編)/森 雅亮清水 正樹(監訳)

定価 13,200 円(本体 12,000 円+税)

B5判/384ページ
刊行日:2022年02月01日
ISBN:978-4-254-32266-8 C3047

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内容紹介

・感染症の重症化メカニズムの1つとして注目される「サイトカインストーム症候群(cytokine storm syndrome)」の機序・病態・治療のすべてが1冊に!
・原著(2019年刊)には含まれない「COVID-19に関連するサイトカインストーム」の最新知見を日本語版オリジナル付録として収載!

編集部から

監訳者の序

 Cron先生,Behrens先生は,世界の専門家らとともに,一次性および二次性血球貪食性リンパ組織球症(HLH)双方の背景にあるサイトカインストーム症候群(CSS)の最新知見を詳細にまとめ,このオリジナルテキスト“Cytokine Storm Syndrome”を出版された.最新の知見を記した各章はPart I:歴史的な背景,臨床症状,検査所見の特徴,診断基準,現行の分類,Part II, III, VII:病態生理(遺伝,免疫,マウスモデル),Part IV, V, VI:異なる潜在的な誘発因子(感染症,リウマチ性疾患,その他),PartVIII:治療と8 章にまとめられ,極めて完成度が高く,初めから終わりまで読み切ったときの感激は格別であった.この良書をもっと多くの日本の臨床家にも読んでいただきたいと考え,若手の意欲ある小児リウマチ医の皆さんとともにぜひ知識を共有したいと思い立ち,翻訳本作製を手掛けることとなった.そして,今回単なる翻訳本にとどまらず,世界を席巻したCOVID-19に関する新しい章(「COVID-19感染症に関連したサイトカインストーム症候群」,「COVID-19小児関連多系統炎症性症候群(MIS-C)」)を巻末に独自に執筆いただき,本邦特有の内容を含めることができた.

 CSSは,異なる誘因に対する宿主の異常な免疫反応により,サイトカイン産生経路が活性化し,稽留熱,肝脾腫,凝固異常を伴う進行性肝不全,血球減少,高フェリチン血症,さらにはしばしば中枢神経障害といった重篤な臨床像を呈する症候群である.もしこれら臨床症状の変化を見いだせず,適切な治療が即座に開始されなければ,急速に多臓器不全に進行し,さらには致死的となる.感染症は最も頻度の高い原因であるが,その他悪性疾患,リウマチ性疾患,造血幹細胞移植の治療経過中の移植片対宿主病や免疫治療薬投与により誘導された医原性のものも存在し,原因は多岐にわたる.

 1990年代前半のサイトカインリリース症候群やそれに引き続くCSSの報告,そして家族性血球貪食性リンパ組織球症の乳幼児に認められたT細胞あるいはNK細胞の細胞傷害に関連した多くの遺伝子異常の発見以来,CSSの病因の解明が日々進んでいる.代謝産物の蓄積,構造的な異常,インフラマソームの調節障害によるマクロファージの活性化,リンパ球のシグナル伝達,分化,機能異常によるウイルス感染症の制御不全,インターフェロン経路の異常,オートファジー異常などについても過剰な炎症病態を惹起する原因となることが明らかになってきている.また二次性HLHに分類されるものの中には,重症複合免疫不全症,複合免疫不全症,自己免疫性リンパ増殖症候群などの原発性免疫不全症,ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症,リシン尿性蛋白不耐症などの遺伝性代謝疾患など,すでに証明された遺伝子異常を持つ症例も含まれる.このように,まだまだ謎多き病態なのである.

 絶え間なき科学および医学の進歩により,この病態の複雑なからくりが解明されて,それほど遠くない未来で,CSSを治療するために真に個別化された医療アプローチが患者さんに適切に提供されることを心から願っている.この翻訳本が,そのための一助になれば幸いである.

 “知識の始まりは,私たちが理解していない何かの発見である”. ~フランク・ハーバート

聖マリアンナ医科大学リウマチ・膠原病・アレルギー内科生涯治療センター/
 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科生涯免疫難病学講座
森 雅亮

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科小児地域成育医療学講座
清水正樹

目次

目次
監訳者の序
刊行に寄せて
序文

Part I 背景
 1. 血球貪食性リンパ組織球症の歴史
 2. 自己免疫疾患におけるマクロファージ活性化症候群の歴史
 3. サイトカインストーム症候群の臨床的特徴
 4. サイトカインストーム症候群の臨床検査の特徴と病理学
 5. サイトカインストーム症候群の診断基準

Part II サイトカインストーム症候群の遺伝学
 6. 一次性血球貪食性リンパ組織球症の遺伝的要因
 7. 後天性サイトカインストーム症候群の遺伝的要因
 8. 全身型若年性特発性関節炎のマクロファージ活性化症候群における遺伝学

Part III サイトカインストーム症候群の免疫学
 9. サイトカインストーム症候群におけるCD8+T細胞の生物学
 10. サイトカインストーム症候群の免疫学:ナチュラルキラー細胞
 11. サイトカインストーム症候群における免疫学的病因としての骨髄系細胞の役割
 12. サイトカインストーム症候群におけるサイトカイン
 13. 原発性免疫不全症とサイトカインストーム症候群

Part IV 感染症関連サイトカインストーム症候群
 14. 感染を契機とするサイトカインストーム症候群:ヘルペスウイルス属(非EBウイルス)
 15. Epstein-Barrウイルスに関連するサイトカインストーム症候群
 16. 出血熱や他のウイルスに関連したサイトカインストーム症候群
 17. ヒト免疫不全ウイルス初感染とサイトカインストーム症候群
 18. 細菌関連サイトカインストーム症候群
 19. 人獣共通感染症関連サイトカインストーム症候群
 20. 寄生虫・真菌関連サイトカインストーム症候群

Part V リウマチ性疾患関連サイトカインストーム症候群
 21. 全身型若年性特発性関節炎に関連するサイトカインストーム症候群
 22. 全身性エリテマトーデスとサイトカインストーム
 23. 川崎病関連のサイトカインストーム症候群
 24. 自己炎症とサイトカインストームの交わり
 25. リウマチ性疾患におけるマクロファージ活性化症候群

Part VI その他の疾患によるサイトカインストーム症候群
 26. 造血器腫瘍および固形腫瘍における血球貪食性リンパ組織球症
 27. サイトカインストームと敗血症性多臓器障害症候群

Part VII サイトカインストーム症候群のマウスモデル
 28. 家族性サイトカインストーム症候群のマウスモデル
 29. 二次性のサイトカインストーム症候群のマウスモデル

Part VIII サイトカインストーム症候群の治療
 30. サイトカインストーム症候群のエトポシドの治療
 31. サイトカインストーム症候群におけるIL-1ファミリーの阻害
 32. サイトカインストーム症候群におけるIL-6阻害
 33. サイトカインストーム症候群に対する抗インターフェロン-γ療法
 34. サイトカインストーム症候群の代替療法
 35. 血球貪食性リンパ組織球症の重症サイトカインストーム症候群に対するサルベージ療法と同種造血幹細胞移植

Appendix 日本語版付録
 A1. COVID-19感染症に関連したサイトカインストーム症候群
 A2. COVID-19関連小児多系統炎症性症候群(MIS-C)

略語一覧
索引

執筆者紹介

■原著編者
Randy Q. Cron (UAB School of Medicine, University of Alabama at Birmingham, Birmingham, AL, USA)
Edward M. Behrens (Perelman School of Medicine, University of Pennsylvania, Philadelphia, PA, USA)

■監訳者
森 雅亮(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科生涯免疫難病学/聖マリアンナ医科大学リウマチ・膠原病・アレルギー内科,リウマチ・膠原病生涯治療センター)
清水正樹(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科小児地域成育医療学)

■翻訳協力
日本リウマチ学会小児リウマチ調査検討小委員会

■訳者
森 雅亮(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科生涯免疫難病学/聖マリアンナ医科大学リウマチ・膠原病・アレルギー内科,リウマチ・膠原病生涯治療センター)
山﨑 晋(順天堂大学医学部附属静岡病院小児科)
清水正樹(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科小児地域成育医療学)
真保麻実(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科発生発達病態学)
阿久津裕子(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科発生発達病態学)
岡本圭祐(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科発生発達病態学)
毛利万里子(聖マリアンナ医科大学リウマチ膠原病アレルギー内科)
影山あさ子(東京都立小児総合医療センター腎臓内科)
赤峰敬治(東京都立小児総合医療センター腎臓内科)
伊良部仁(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科生涯免疫難病学)
宮岡双葉(川口市立医療センター小児科)
畠野真帆(千葉市立海浜病院小児科)
東 夏未(草加市立病院小児科)
金子修也(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科発生発達病態学)
作村直人(金沢大学附属病院小児科)
水田麻雄(兵庫県立こども病院リウマチ科)
中岸保夫(兵庫県立こども病院リウマチ科)
合田由香利(兵庫県立こども病院総合診療科)
松村 治(兵庫県立こども病院総合診療科)
吉岡耕平(聖マリアンナ医科大学リウマチ膠原病アレルギー内科)

■執筆者(日本語版付録)
清水正樹(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科小児地域成育医療学)
今井耕輔(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科茨城県小児周産期地域医療学)
岡本圭祐(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科発生発達病態学)

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