Jポップの日本語研究 ―創作型人工知能のために―

伊藤 雅光(著)

伊藤 雅光(著)

定価 3,520 円(本体 3,200 円+税)

A5判/216ページ
刊行日:2017年05月25日
ISBN:978-4-254-51054-6 C3081

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内容紹介

Jポップの歌詞を「ことば」として計量的な分析にかけていくことで,その変遷や様々な特徴を明らかにしつつ,研究の仕方を示し,その成果をもとに人工知能にラブソングを作らせることを試みる。AIは一人で恋の歌を歌えるのか?

編集部から

いつも聴いているJポップの歌詞は流行・世相を反映した楽しい研究テーマでもあります。でも,ただ字面を眺めても研究の考察をするのは難しいものです。そこに到る手ほどきとして,本書から,歴史・テーマ・語彙分析の仕方,語彙表づくりと人工知能の歌詞生成まで,読んでいただければ役に立ちます。

目次

◎第1部 Jポップの言語学
 第1章 和風化するJポップ
(日本語回帰現象の実態を「中島みゆきと松任谷由実の歌詞テクスト」,「ヒットランキング100の歌詞タイトル」,「ヒットランキング100の歌詞テクスト」,「戦後ポップス史」の順に明らかにしていく。さらに,「日本語回帰」現象が発生するまでの戦後ポップス史における「洋風化」の流れをジャンル別に確認していく。)
 1.1 松任谷由実と中島みゆきの歌詞テクストにみられる日本語回帰現象  
 1.2 ヒットランキング100の歌詞タイトルにおける外来語と外国語の増減過程  
 1.3 ヒットランキング100の歌詞テクストにおける外来語と外国語の増減過程  
 1.4 戦後ポップス史における和風化段階モデル  
 1.5 洋楽カバーポップスの時代  

 第2章 Jポップはなぜ和風化するか
(Jポップはなぜ和風化するかという視点から,「日本語回帰」現象が起こった原因を日本文化論に基づいて考察する。)
 2.1 「洋楽離れ」と「邦楽志向」  
 2.2 日本語回帰説の土台となる日本文化論  

◎第2部 中島みゆきとユーミンの言語学
 第3章 中島みゆきと松任谷由実の歌詞はどちらが豊かか
(中島みゆきとユーミンの全歌詞の語彙を文体指標に基づいて分析することにより,どちらの方が語彙が豊かか,そしてその理由は何かを明らかにする。)
 3.1 中島みゆきと松任谷由実の創作力発揮モデル  
 3.2 中島とユーミンの語彙はどちらが豊かか  

 第4章 中島とユーミンの「語り」の文体をさぐる
(まず歌詞の「語り」の文体の体系を構築してから,中島とユーミンの歌詞における人称代名詞の使用比率を比較することで,二人の歌詞における「語り」の文体の特徴を明らかにする。)
 4.1 歌詞の「語り」の文体の体系  
 4.2 人称代名詞から中島とユーミンの「語り」の文体的特徴をさぐる  

 第5章 ナラティブモデルによる中島とユーミンの創作の秘密の解明
(心理療法のナラティブモデルを応用して,人称代名詞の変遷からみた中島とユーミンの創作の秘密を探る。)
 5.1 「ドミナントストーリー(支配的な物語)」と「オルタナティブストーリー(代替的な物語)」とは何か  
 5.2 中島とユーミンの創作の秘密  

◎第3部 男歌と女歌のテーマ分析
 第6章 ユーミンは何を歌ってきたか
(ユーミンがこれまで発表してきた383作品を対象にしてテーマ分析と,もっとも多いテーマである「恋」のテーマタイプの体系と構造を構築する。)
 6.1 ユーミンの「恋」の類型論  
 6.2 「恋」のタイプとユーミンソング 

 第7章 男性作詞家(シンガーソングライター)は何を歌ってきたか 71
(1999~2008年のランキング・ベストワンの流行歌と男性ソングライター7名の歌詞のテーマ分析と,「恋愛」のテーマタイプの体系と構造を構築する。(小椋佳,ミスチル:桜井,ゆず:北川・岩沢,コブクロ:小渕,いきものがかり:水野・山下))
 7.1 流行歌ランキング・ベストワンのソングライターは何をテーマにしてきたか  
 7.2 男性ソングライターは何を歌ってきたか  

 第8章 女性作詞家とアイドルは何を歌ってきたか
(女性ソングライター4名とアイドル歌手2名の歌詞のテーマ分析と,「恋愛」のテーマタイプの体系と構造を構築する。(竹内まりや,ドリカム:吉田美和,aiko,miwa,松田聖子,中森明菜))
 8.1 女性ソングライターは何を歌ってきたか  
 8.2 アイドル歌手・松田聖子と中森明菜は何を歌ってきたか  

 第9章 男女の作詞家のテーマを比較する
(これまでの男女のソングライターとアイドル歌手のデータを比較することにより,テーマの男女差を明らかにしていく。)
 9.1 テーマ全体の比較  
 9.2 恋愛のテーマタイプの比較  

◎第4部 男歌と女歌の語彙分析
 第10章 男歌と女歌のことばを計算する
 10.1 男歌と女歌のタイニーコーパスを作成する  
 10.2 男女別の度数順語彙表の作成  
 10.3 Jポップソング分析のための品詞論  
 10.4 品詞構成比率から見た歌詞テクストの表現性  

 第11章 男歌と女歌のことばを分類する
(前章で作成した二つの度数順語彙表を利用して,男歌と女歌の対照語彙表と構造語彙表とを作成する。)
 11.1 対照語彙表の作成 
 11.2 構造語彙表の作成  

 第12章 男歌と女歌のことばを分析する
(前章で作成した構造語彙表の分析法と分析事例とを紹介していく。)
 12.1 構造語彙表の第一次分析  
 12.2 構造語彙表の第二次分析  
 12.3 構造語彙表の第三次分析  

◎第5部 創作型人工知能とは何か
 第13章 機械はラブソングを作れるか
(筆者が開発した創作型人工知能(創作型AI)の原理と研究史と疑似ユーミンソングの自動生成実験から得られた創作型AIの可能性を考察する。)
 13.1 創作型人工知能のしくみ 
 13.2 テクスト自動生成の研究史  
 13.3 疑似ユーミンソングを生成する創作型人工知能システム  
 13.4 創作型人工知能が生成する「テクストらしさ」  
 13.5 創作型人工知能システムの改良  
 13.6 J ポップソングのテクスト構造と曲構造  

 第14章 機械的にラブソングを作る─失恋ソング生成語彙表の使い方
(巻末付録の「失恋ソング生成語彙表」をどのように使って,ユーミン風の失恋ソングを機械的に作成していくかを説明する。)
 14.1 失恋ソング生成語彙表とは何か  
 14.2 失恋ソング生成語彙表による歌詞の自動生成法  

 終章 歌詞創作型AI 研究の意義
(次の諸分野からみた歌詞創作型AI 研究の意義について考察する。「科学的研究方法,人文科学,文学研究,感性工学,複雑系,言語学」)
 15.1 科学的研究方法からみた歌詞創作型AI  
 15.2 人文科学からみた歌詞創作型AI  
 15.3 文学研究からみた歌詞創作型AI  
 15.4 感性工学からみた歌詞創作型AI  
 15.5 複雑系からみた歌詞創作型AI  
 15.6 言語学からみた歌詞創作型AI  
 15.7 「クローン人工知能」としての歌詞創作型AI  

 付録 「失恋ソング生成語彙表」
 参考文献・楽曲
 索引

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