刊行のことば(序文より)

背表紙

 仏教国と言ってよい日本では,仏教への関心が高く,もっと仏教について知りたいという要望を一般の人からも多く聞く. 仏教の歴史や教えについて基本的な知識を得たい,自分の属する宗派ではどんな教理に基づいてどんな実践をしているのか知りたい, 仏教寺院に詣でて仏像を参観したり,海外の仏教遺跡を旅行するときに手掛かりが欲しい,等々,多くの人が望んでいることであろう. そのような多様な要望を満足させつつ,しかも仏教の全般が見渡せ, 日本の文化の深層やアジアの文化の多様性まで理解できるような仏教百科事典が必要だということは,かなり以前から言われていた.

 朝倉書店から仏教の事典を出版したいという企画が持ち上がり,相談を受けた時,これまで日本で必要とされながら提供されてこなかった, このような仏教百科事典をぜひ実現させたいと願った.それぞれの分野の専門家が最新の信頼できる知識を提供して,この一冊で仏教のすべてが展望でき, しかも初心者でも理解可能という,ぜいたくで理想的な要求をすべて満たす,読む仏教事典の決定版を目指した.

 本書は,このような意図を実現するために,五十音順の項目配列を取らず, 「仏教を知る」〔歴史〕,「仏教を考える」〔思想〕,「仏教を行う」〔実践〕,「仏教を旅する」〔地理〕,「仏教を味わう」〔文化〕の五部に分けて,体系的に論ずるようにした. 知りたいことがあれば,その前後をも併せ読むことによって,その問題が仏教全体の中で,どのような位置を占めるか知ることができるであろう.単に学界の常識を提供するだけでなく, それを超えた新しい視点をも示しているので,専門家であっても有益な刺激を得ることができるであろう.

 仏教に関心を持つ個人や家庭はもちろん,地域や高校・大学などの図書館にも配架され,まったく知識を持たない人でも,仏教に関して何か知ろうとする際に, まず手に取って全体の見取り図を描くことができ,少し進んだ人はさらに深く仏教を理解できるような,スタンダードな事典として親しまれることを願っている.

目次

第1章  仏教を知る〔歴史〕

  • 1.1 序論
  • 1.2 教典
    • 1.2.1 教典形成過程
    • 1.2.2 インドの諸経典
      • 1.2.2.1 原始・部派教典
      • 1.2.2.2 大乗教典
    • 1.2.3 チベットの教典
    • 1.2.4 中国・朝鮮の教典
      • 1.2.4.1 仏教の翻訳と集成
      • 1.2.4.2 中国・朝鮮で撰述された教典
    • 1.2.5 日本の教典
  • 1.3 教団形成と地域展開
    • 1.3.1 教団形成と戒律
    • 1.3.2 インドにおける展開
    • 1.3.3 東南アジアにおける展開
    • 1.3.4 チベット・モンゴルにおける展開
    • 1.3.5 中国・朝鮮における展開
    • 1.3.6 日本における展開
    • 1.3.7 欧米の仏教

図1.24 ニューヨークのセントラル公園で毎年恒例の「Change Youe Mind Day(心を変革する日)」という集会に参加する人(Don Farber 撮影)

第2章  仏教を考える〔思想〕

  • 2.1 序論
  • 2.2 ブッダと聖者たち
    • 2.2.1 ブッダの生涯,仏伝,過去仏
    • 2.2.2 仏教神話
    • 2.2.3 仏身論
    • 2.2.4 祖師信仰
  • 2.3 教えの展開
    • 2.3.1 原始・部派仏教
    • 2.3.2 大乗仏教
    • 2.3.3 密教
    • 2.3.4 上座部仏教
    • 2.3.5 チベット仏教
    • 2.3.6 中国仏教
    • 2.3.7 日本仏教
  • 2.4 受容と交流
    • 2.4.1 インド
    • 2.4.2 中国
    • 2.4.3 日本

図2.1大聖毘沙門天象(敦煌)(彌永信美『大黒天変相』法蔵館,2002より)

第3章  仏教を行う〔実践〕

  • 3.1 序論
  • 3.2 仏教の基本的実践
  • 3.3 実践思想の展開
    • 3.3.1 南都仏教系
    • 3.3.2 天台系
    • 3.3.3 真言系
    • 3.3.4 浄土系
    • 3.3.5 禅系
    • 3.3.6 日蓮系
    • 3.3.7 修験道
  • 3.4 仏教諸潮流の実践
    • 3.4.1 上座部仏教の実践
    • 3.4.2 チベット・ネパール仏教の実践
  • 3.5 社会的実践
    • 3.5.1 葬式
    • 3.5.2 社会活動
    • 3.5.3 女性と仏教

図 3.13 大峰山寺戸開け式の人馬<br />(宮家隼(1999)『修験道思想の研究』春秋社より)

第4章  仏教を旅する〔地理〕

  • 4.1 序論
  • 4.2 仏教寺院の形成と機能
  • 4.3 仏教聖地と巡礼
    • 4.3.1 インド
    • 4.3.2 上座部仏教圏
    • 4.3.3 チベット・ネパール
    • 4.3.4 中央アジア
    • 4.3.5 中国
    • 4.3.6 韓国
  • 4.4 仏教僧の往来
  • 4.5 日本の聖地と巡礼

図 4.29 洛山寺観音堂(同寺院ホームページより)

第5章  仏教を味わう〔文化・芸術〕

  • 5.1 序論
  • 5.2 仏教美術の形成と展開
  • 5.3 仏教文学の世界
  • 5.4 年中行事と芸能
  • 5.5 仏教文化の広がり

図 5.10 『酒飯論』にみる調菜人(国立国会図書館蔵本より)

執筆者情報

編集者

末木文美士
国際日本文化研究センター
下田正弘
東京大学
堀内伸二
中村元東方研究所

執筆者(五十音順)

石井清純
駒澤大学
石濱裕美子
早稲田大学
彌永信美
フランス国立極東学院
石上和敬
武蔵野大学
遠藤敏一
香港大学
小野田俊蔵
佛教大学
加藤栄司
中村元東方研究所
河野 訓
皇學館大学
菅野博史
創価大学
久間泰賢
三重大学
佐久間秀範
筑波大学
佐久間留理子
中村元東方研究所
佐々木 閑
花園大学
佐藤宏宗
中村元東方研究所
佐藤もな
帝京高等看護学院
下田正弘
東京大学
釈 悟震
中村元東方研究所
末木文美士
国際日本文化研究センター
鈴木隆泰
山口県立大学
曽根原 理
東北大学
田中ケネス
武蔵野大学
種村隆元
二松学舎大学
陳 継東
青山学院大学
浪花宣明
中村元東方研究所
西岡祖秀
四天王寺大学
西本照真
武蔵野大学
花野充道
法華仏教研究会
羽矢辰夫
青森公立大学
原田信男
国士舘大学
平岡 聡
京都文教大学
平岡昇修
東大寺
平野多恵
成蹊大学
福田洋一
大谷大学
藤井教公
国際仏教学大学院大学
藤井恵介
東京大学
藤丸智雄
教学伝道研究センター
藤井恵介
東京大学
藤丸智雄
教学伝道研究センター
細田典明
北海道大学
堀内伸二
中村元東方研究所
本庄良文
佛教大学
前川健一
東洋哲学研究所
松尾剛次
山形大学
松下みどり
日本女子大学
三橋 正
明星大学
蓑輪顕量
東京大学
元山公寿
大正大学
藪内聡子
東洋大学
山極伸之
佛教大学
山部能宜
東京農業大学
吉村 均
中村元東方研究所
吉村 誠
駒澤大学
ランジャナ・ムコパディヤーヤ
デリー大学

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