多変数解析関数論 (第2版) ―学部生へおくる岡の連接定理―

野口 潤次郎(著)

野口 潤次郎(著)

定価 7,150 円(本体 6,500 円+税)

A5判/404ページ
刊行日:2019年09月01日
ISBN:978-4-254-11157-6 C3041

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内容紹介

現代数学で広く用いられる多変数複素関数論の基礎をなす岡潔の連接定理を,学部生向けにやさしく解説。証明がより平明になった改訂版。〔内容〕正則関数/岡の第1連接定理/層のコホモロジー/正則凸領域と岡・カルタンの基本定理/他

編集部から

●2013年3月刊の『多変数解析関数論―学部生におくる岡の連接定理―』の改訂版

●数学史に大きな足跡を残した岡潔(1901-1978)の理論を中心に,学部上級生から理解できるように丁寧に解説する。岡潔の人生と数学についての解説を巻末に付す。

●改訂のポイント: 
(1)下記の主要な三つの定理の証明を大幅に簡略化.学部生レベルの読者でもより理解しやすく改訂.
・岡の第1 連接定理の証明 (定理2.5.1).
・H. カルタンの行列分解補題の証明 (補題4.2.5:初版では補題4.2.2).
・L. シュヴァルツの有限次元性定理の証明 (定理7.3.19:初版では定理7.3.17)

(2)その他,代数の初等的な部分や微分形式の導入部分,例など追加・補筆.

(3)演習問題を整理・追加して章末に演習問題のパートを新設.

●第2版によせて(本書「序」より)
 先人の種々の工夫にもかかわらずこれまでかなり煩雑な手続きで証明されていたH. カルタンの行列分解定理 (融合定理) とL. シュヴァルツの有限次元性定理の証明が,初版の出版後に大幅に簡略化されることが判明し,補足として公開されてきた.また,英語版の出版もあり,内容にいくつか補充したい部分も出てきた.それらを全て取り込み,版を更新して出版することになった.初版に比して主な変更点は次の3項目である.
 (i) 岡の第1連接定理の証明 (定理2.5.1).
 (ii) H. カルタンの行列分解補題の証明 (補題4.2.5).
 (iii) L. シュヴァルツの有限次元性定理の証明 (定理7.3.19).
その他,代数の初等的な部分や微分形式の導入部分,例など追加・補筆した.
 (i) は,拙著33に基づくもので,生成元の取り方に工夫を加え証明をより自然にした.(ii) では行列のノルム評価を改良し,より単純な方法で証明を簡易化した.(iii) は,初版では約23頁費やしていたものが,本改訂版ではバナッハの開写像定理の証明を入れても8頁に縮まった.全体としては,初版より約25頁増えているので,約40頁分が加筆されたことになる.
 本書を十数年以前から企画し始めて,上述の三点が著者にとって満足のいかない部分として残っていたが,今回それらが全て解消した.この間,阿部誠氏,濵野佐知子氏,山ノ井克俊氏,そして東大数理・月曜セミナーのメンバーとの種々な議論には大いに助けられた.深く感謝するところである.また初版以来,本改訂第2版の出版について朝倉書店編集部には大変お世話になった.記して感謝したい.

目次

1. 正則関数
 1.1 一変数正則関数
 1.2 多変数正則関数
  1.2.1 多変数正則関数の定義
  1.2.2 モンテルの定理
  1.2.3 近似定理
  1.2.4 解析接続
  1.2.5 陰関数定理
 1.3 層
  1.3.1 層の定義
  1.3.2 前層
  1.3.3 色々な層

2. 岡の第1連接定理
 2.1 ワイェルストラスの予備定理
 2.2 正則局所環
  2.2.1 代数からの準備
  2.2.2 On,a の性質
 2.3 解析的集合
 2.4 連接層
 2.5 岡の第1連接定理

3. 層のコホモロジー
 3.1 完全列
 3.2 テンソル積
  3.2.1 テンソル積の復習
  3.2.2 層のテンソル積
 3.3 連接層の完全列
 3.4 層のコホモロジー
  3.4.1 チェックコホモロジー
  3.4.2 長完全列
  3.4.3 層の分解とコホモロジー
 3.5 ド・ラーム コホモロジー
  3.5.1 微分形式と外積
  3.5.2 実領域
  3.5.3 複素領域
 3.6 ドルボー コホモロジー
 3.7 クザンの問題
  3.7.1 クザンI問題
  3.7.2 クザンII問題

4. 正則凸領域と岡-カルタンの基本定理
 4.1 正則凸領域
 4.2 カルタンの融合補題
  4.2.1 行列・行列値関数
  4.2.2 H. カルタンの行列分解
  4.2.3 融合補題
 4.3 岡の基本補題
  4.3.1 証明の手順
  4.3.2 岡分解
  4.3.3 岡の基本補題
 4.4 岡-カルタンの基本定理
 4.5 スタイン多様体と岡-カルタンの基本定理
  4.5.1 複素多様体
  4.5.2 スタイン多様体

5. 正則領域
 5.1 正則包
 5.2 ラインハルト領域
 5.3 正則領域と正則凸領域
 5.4 正則領域と近似列
 5.5 クザンの問題と岡原理
  5.5.1 クザンI問題
  5.5.2 クザンII問題
  5.5.3 岡原理
  5.5.4 エルミート正則直線束
  5.5.5 K. スタインの例
  5.5.6 岡の例
  5.5.7 セールの例
  5.5.8 単連結スタイン多様体上の非可解クザンII分布の例

6. 解析的集合と複素空間
 6.1 準備
  6.1.1 代数的集合
  6.1.2 解析的集合
  6.1.3 通常点と特異点
  6.1.4 有限写像
 6.2 解析的集合の芽
 6.3 代数的基本事項
 6.4 正則局所環のイデアル
 6.5 岡の第2 連接定理
  6.5.1 幾何学的イデアル層
  6.5.2 特異点集合
  6.5.3 ハルトークスの拡張定理
  6.5.4 解析的集合上の連接層
 6.6 解析的集合の既約分解
 6.7 有限正則写像
 6.8 解析的集合の接続
 6.9 複素空間
 6.10 正規複素空間と岡の第3 連接定理
  6.10.1 正規複素空間
  6.10.2 普遍分母
  6.10.3 非正規点集合の解析性
  6.10.4 岡の正規化と第3連接定理
 6.11 正規複素空間の特異点
  6.11.1 極大イデアルの階数
  6.11.2 正規空間の特異点は余次元2 以上
 6.12 スタイン空間と岡-カルタンの基本定理

7. 擬凸領域と岡の定理
 7.1 多重劣調和関数
  7.1.1 劣調和関数
  7.1.2 多重劣調和関数
 7.2 擬凸領域
 7.3 L. シュヴァルツの定理
  7.3.1 線形位相空間
  7.3.2 フレッシェ空間
  7.3.3 L. シュヴァルツの有限次元性定理
 7.4 岡の定理
 7.5 リーマン領域上の岡の定理
  7.5.1 リーマン領域
  7.5.2 擬凸性
  7.5.3 強擬凸領域

8. 連接層コホモロジーと小平の埋め込み定理
 8.1 連接層の切断空間の位相
  8.1.1 C^nの領域
  8.1.2 複素多様体
  8.1.3 複素空間
 8.2 カルタン-セールの定理
 8.3 正直線束とホッジ多様体
 8.4 グラウェルトの定理
  8.4.1 強擬凸領域
  8.4.2 正直線束
 8.5 小平の埋め込み定理

連接性について
余録
参考書・文献

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