咀嚼の事典

井出 吉信(編)

井出 吉信(編)

定価 15,400 円(本体 14,000 円+税)

B5判/368ページ
刊行日:2007年04月25日
ISBN:978-4-254-30089-5 C3547

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内容紹介

咀嚼は,生命活動の基盤であり,身体と心のパフォーマンスの基本となる。噛むこと,咀嚼することは,栄養の摂取という面だけではなく,脳をはじめ全身の機能の発達や維持と密接に関わっている。咀嚼を総合的にまとめた本書は医学,歯学,生物学,看護科学,保健科学,介護・福祉科学,医療技術,健康科学,スポーツ科学,栄養学,食品科学,保育学,教育学,パフォーミング・アーツ,心理学などの学生・研究者・実務家,咀嚼と健康の関わりに興味・関心のある人々の必携書。

編集部から

 咀嚼は生理機能のひとつですが,一般には比喩的にも使われることばです。よく吟味する,深く考えて正しく理解する,というような意味でも使われ,その反対語が「鵜呑み」ということになるかと思います。したがって,咀嚼は,プラスイメージの伴う大事なものと理解されているのではないでしょうか。
 本書は,生理機能としての咀嚼を総合的に解説したものですが,その本来の重要性が的確に理解できるような書となっています。
 咀嚼とは,食物を口腔内で噛み砕き,嚥下するための食塊を形成する過程,ということになります。使われるものは,上顎骨,下顎骨,歯,咀嚼筋・舌骨上筋などの筋肉,口唇,頬,舌,軟口蓋や硬口蓋,歯肉など,さまざまで,大脳中枢から指令が出て,神経系統の伝達も円滑に行われなければなりませんし,唾液も適切に分泌されなければなりません。
 咀嚼することは中枢神経系,消化器系,内分泌系などに大きな影響を与えることが証明されています。とくに発育過程において咀嚼は重要で,小児にとっては,固めの食物をしっかりと咀嚼して食事を摂ることが,顎骨・口腔周囲組織のみならず,脳の発育の活性化にもつながります。単に栄養の摂取だけでなく,全身の機能の発達や維持と密接に関わっているのが,咀嚼という行為なのです。
 加齢に伴いさまざまな機能が衰えますが,咀嚼も例外ではなく,咀嚼嚥下障害というのはかなり一般的にみられる現象で,誤嚥による二次的な障害も含めて,高齢化社会では重要な問題となっています。咀嚼を意識的に行い訓練することは,成人病の予防としても重要であることが指摘されています。
 解剖学,生理学,人類学,歯科学,衛生学,小児科学,加齢医学,リハビリテーション科学,比較生物学,生物システム工学,スポーツ歯学,など,多彩なジャンルから参画いただいた執筆陣の論考をお楽しみいただければ幸いです。(小畑)

目次

1. 顎骨と顎関節の形態学
 1.1 顎骨の特徴
 1.2 顎関節の基本形態
2. 咀嚼の発生と進化
 2.1 系統発生と個体発生
 2.2 咀嚼器の起源:口腔の発生
 2.3 鰓の形成:脊椎動物の起源
 2.4 顎と歯の形成:無顎類から顎口類へ
 2.5 陸上での捕食:舌筋の発達
 2.6 温血性の獲得:哺乳と咀嚼の開始
 2.7 直立二足歩行:「口腔前消化」による咀嚼器の退化
3. 咀嚼運動とは何か
 3.1 咀嚼時の食物動態
 3.2 咀嚼運動の中枢性制御機構
 3.3 咀嚼運動の末梢性(感覚性)調節
4. 咀嚼と味覚,消化吸収
 4.1 咀嚼と味覚
 4.2 咀嚼とエネルギーバランス
 4.3 咀嚼とストレス
5. 咀嚼と唾液分泌
 5.1 咀嚼と唾液分泌の関連としくみ
 5.2 唾液成分の生体機能
6. 咀嚼による歯,顎骨,その他の組織への刺激
 6.1 咀嚼器官・顎顔面への刺激
 6.2 脳への刺激
 6.3 全身への刺激
7. 咀嚼の異常
 7.1 咀嚼異常の概要
 7.2 咀嚼の異常をもたらすもの
 7.3 咀嚼機能の異常
8. 咀嚼異常の矯正と治療
 8.1 咀嚼時の口腔周囲筋の異常
 8.2 不正交合と咀嚼運動・咀嚼パターン異常
 8.3 矯正治療による咀嚼パターンの変化,改善
 8.4 口腔筋機能療法による咀嚼嚥下指導
9. 咀嚼のリハビリテーション
 9.1 リハビリテーションについての基礎知識
 9.2 障害に関する基礎知識
 9.3 治療に関する基礎知識
 9.4 咀嚼のリハビリテーションの実際
10. 咀嚼障害のチーム医療
 10.1 チーム医療を「学ぶ理由」
 10.2 チーム医療を円滑にすすめる技術
 10.3 仕事に必要なコミュニケーション技術を磨く
 10.4 咀嚼・嚥下障害のチーム医療
11. 人類の食性と咀嚼―適応進化的意義
 11.1 概   要
 11.2 変化に富む霊長類の進化と食性
 11.3 機能で読み解く人類の進化と咀嚼
 11.4 大冒険だった猿人の食性と咀嚼
 11.5 文化が影響したホモ属人類の食性と咀嚼
 11.6 歴史を明らかにする日本人の食生活と咀嚼器
12. 哺乳類の咀嚼様式
 12.1 哺乳類にとっての咀嚼の意義
 12.2 哺乳類の咀嚼器官の基本構造
 12.3 咀嚼筋の力学
 12.4 咀嚼器官と顎運動の多様性
13. 咀嚼と栄養学
 13.1 咀嚼機能の発達過程
 13.2 咀嚼の発達と栄養調理
 13.3 咀嚼に関わるテクスチャー
 13.4 咀嚼機能とテクスチャー
14. 咀嚼とスポーツ
 14.1 咬合の状態変化が直立姿勢,特に重心動揺軌跡に及ぼす影響
 14.2 咬合の状態変化が全身の筋力,特に背筋力に及ぼす影響
 14.3 咬合の状態変化が重心動揺と背筋力,双方同時に及ぼす影響
15. 咀嚼と心身医療
 15.1 概   要
 15.2 ヒト本来の食べ物の意義
 15.3 咀嚼性健康状態について
 15.4 歯種の歯列構成比と適性栄養バランス比との相関からみたヒト本来の食物摂取比に関する仮説
 15.5 咀嚼回数に関する比較動物学的観察
 15.6 咀嚼習慣の診断と評価
 15.7 咀嚼習慣の観察
 15.8 咀嚼指導について
 15.9 咀嚼指導による心身状態と衛生的生活習慣の改善

 索   引

執筆者紹介

【執筆者】
井出吉信,阿部伸一,後藤仁敏,山田好秋,山村健介,山村千絵,松尾龍二,小橋基,石塚健一,斎藤英一,田村康夫,植松 宏,菅野文雄,武内謙典,豊田真基,水口俊介,石川耕司,西堀雅一,隅田由香,谷口尚,木野孔司,羽毛田匡,福永暁子,戸原玄,山口秀晴,茂木悦子,山根源之,渡邊裕,藤谷順子,馬場悠男,佐藤和彦,向井美惠,弘中祥司,村田尚道,内海明美,石上惠一,武田友孝,中島一憲,都 温彦 
(執筆順)

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