第8章練習問題

(1) 互いに独立な確率変数の列$X_{1},X_{2},..,$ が同一の指数分布 \[ F(x)=1-\exp(-\beta x),\qquad\beta>0,x\geq0 \] に従う時, 適当な数列$\{c_{n}\}, \{d_{n}\}$を見つけることにより, 規準化されたブロック最大値の列$\{Z_{n}=(M_{n}-d_{n})/c_{n}\}$ の漸近分布がGumbel分布 \[ H_{0}(z)=\exp(-e^{-z}) \] となることを示しなさい.

(2) (1)において, $F$がPareto分布 \[ F(x)=1-\left( \frac{k}{k+x}\right) ^{\alpha},\qquad\alpha>0,\, k>0, \, x\geq0 \] 従う場合についても同様に示しなさい.

(3) ブロック最小値$m_{n}=\min(X_{1},...,X_{n})$に対する漸近分布を, ブロック最大値$M_{n}$の漸近分布$H_{\xi}(x)$の関数として表現しなさい.

(4) 式(8.10) \[ \begin{aligned} F_{u}(x)=G(x;\xi,\beta+\xi u),\\ e(u)=\frac{\beta+\xi u}{1-\xi}. \end{aligned}, \] 式(8.11) \[ \begin{array}{c} F_{v}(x)=G(x;\xi,\beta+\xi(v-u)),\\ e(v)=\frac{\beta+\xi(v-u)}{1-\xi}, \end{array} \] を導出しなさい.

(5) 式(8.12) \[ f(x)=\frac{\alpha b^{\alpha}}{x^{\alpha+1}}1_{\left( x\geq b\right) } \] に対して, 特性指数$\alpha$の最尤推定量は式(8.13) \[ \frac{1}{\widehat{\alpha}_{n}}=\frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}\ln\left( \frac {X_{i}}{b}\right) \] で与えられることを示しなさい. さらに, この最尤推定量の逆数が不偏性式(8.14) \[ \E\left[ \frac{1}{\widehat{\alpha}_{n}}\right] =\frac{1}{\alpha} \]を持つことを示しなさい.

(6) 安定分布の特性関数の定義から式(8.23) \begin{eqnarray} \nonumber \psi_{X}\left( s \right) &=& \exp\left( \zeta \left( s \right) \right) ,\nonumber\\ \zeta \left( s \right) &=& \left\{ \begin{array} [c]{c} \mathrm{i}\mu s -\sigma^{\alpha}\left\vert s \right\vert ^{\alpha}\left\{1-\mathrm{i}\beta\operatorname{sgn}\left( s \right) \tan\left( \frac{\pi\alpha}{2}\right) \right\} ,\qquad\qquad\text{(}\alpha\neq1\text{)}\\ \nonumber \mathrm{i}\mu s -\sigma^{\alpha}\left\vert s \right\vert ^{\alpha}\left\{1+\mathrm{i}\beta\operatorname{sgn}\left( s \right) \frac{2}{\pi}\ln\left\vert s \right\vert \right\} ,\qquad\qquad\text{(}\alpha=1\text{)} \end{array} \right. \end{eqnarray} において $\mu=0$, $\beta=0$のとき式(8.29) \[ p_{\Delta t}\left(0\right) = \frac{\Gamma\left( 1/\alpha\right) } {\pi\alpha\left(\gamma\Delta t\right)^{1/\alpha}} \] を示しなさい. これより, \[ \widehat{p}_{n\Delta t}\left( 0\right) =n^{-1/\alpha}\widehat{p}_{\Delta t}\left( 0\right) \] を確認せよ.

(7) 自己相似過程(式(8.19))は定常過程ではないことを確認しなさい.

(8) 株価変動分布の中心部形状の分析は, 株価変動幅に対する分析でも, 収益率に対する分析でも, 高頻度領域において極めて類似の統計的性質が見られたとしている.
金融時系列データには, 幾つかのタイプの「スケーリング則」ないしは「べき則」が成り立つと言われている. このうち, 収益率$\Delta X=\ln X(t+\Delta t)-\ln X(t)$の標準偏差とその計測期間との間に \[ \sigma_{\Delta X}\propto\left( \Delta t\right) ^{d} \label{eq:scaling-law}% \] なるスケーリング則が成り立つとの研究報告もある. ここで, $d$は, $\Delta t$によらない定数である. Mantegna and Stanley (2000)はSP500の1984年1月から1989年12月までの6年分のデータに対して, $\Delta t=1$から$10,000$ 分まで動かしてこの関係が成立することを確認し, $d=0.53$なる計測値を得た. 高頻度データを異なる日に対して結合した一本の時系列として用意し, $\Delta t$を動かして, 対応するボラティリティ(価格変化または対数価格変化)を計算し, 各ペアをlog-logプロットで表示し直線関係の有無を確認せよ. さらに, 回帰係数を求めることにより$d$の値を求めよ.

 [文献]
Mantegna, R.N. and Stanley, H. (2000) An Introduction to Econophysics Correlations and Complexity in Finance, Cambridge University Press.

(9) いま, (8)で用いた高頻度データを用いて, $\Delta t$を変化させながら, 原点($x=0$)における確率密度の推定値$\widehat{p}_{\Delta t}\left( 0\right) $を ヒストグラムあるいは, カーネル法によって推定し, 式(8.29) \[ p_{\Delta t}\left( 0\right) =\frac{\Gamma\left( 1/\alpha\right) } {\pi\alpha\left( \gamma\Delta t\right) ^{1/\alpha}} \] が成立すると仮定して, $\log$-$\log$プロットの傾きから$\alpha$を推定せよ. さらに, 真の分布が正規分布であるとした場合, 8で計算された標準偏差の推定値 $\hat{\sigma}_{\Delta X}$を用いて, 正規分布の確率密度 \[ p_{\Delta t}\left( 0\right) =\frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma_{\Delta X}}% \] に代入すれば, ゼロの周りの確率密度が推定される. このことを利用して得 られる$\log$-$\log$プロットと上記プロット図とを比較せよ.

(10) 株価変動分布のテール形状の分析
(8)で用いた高頻度データを用いて, Hill推定を行いテール指数についての推定を行え.

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