昆虫の脳をつくる ―君のパソコンに脳をつくってみよう―

神崎 亮平(編著)

神崎 亮平(編著)

定価 4,070 円(本体 3,700 円+税)

A5判/224ページ
刊行日:2018年04月25日
ISBN:978-4-254-10277-2 C3040

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内容紹介

昆虫の脳をコンピュータ上に再現する世界初の試みを詳細に解説。普通のパソコンで昆虫脳のシミュレーションを行うための手引きも掲載。〔目次〕昆虫の脳をつくる意味/なぜカイコガを使うのか/脳地図作成の概要とソフトウェア/他

編集部から

○カイコガの脳をコンピュータ上で丸ごと再現し,脳神経の仕組みをさぐるという,東大先端研究所での世界初の試みを詳細に解説。さらに,普通のパソコンで昆虫脳のシミュレーションを行うためのフリーウェアやその使い方の手引きなども紹介。
○脳神経科学を学ぶ学生や研究者,脳シミュレーションに関心をもつ生物系・情報系など関係分野の研究者。パソコン上で高度なシミュレーションに関心のあるすべての人へ。
○「比較神経科学プラットフォーム(CNS-PF)」ホームページ内に,本書の特設サイトを設けていただきました.
右欄をクリックしますと本書で紹介されているデータやプログラム等をダウンロードすることができます.


●本書について(「はじめに」より抜粋)
「(前略) 昆虫の感覚や脳・行動のしくみが,遺伝子からニューロン・神経回路・行動と異なるレベルから,さまざまな方法により分析され,脳をつくる要素であるニューロンの形や機能を組み上げてスーパーコンピュータ上に脳を再現したり,昆虫独自の優れたセンサや脳機能(知能)を工学的に実現して応用する研究がはじまっている。
 本書は,皆さんに「昆虫」を用いたこのような脳研究がどのように行われているか,その最前線をわかりやすく解説するものである。これまでの脳の解説書がその形やはたらきを実例をもとにして,「読んで理解する」ことに主眼がおかれてきたのに対して,本書では,昆虫の感覚・脳・行動のしくみを解説するのはもちろんだが,わたしたち研究者が実際に得てきたニューロンの形や神経活動のデータを使って,みなさんのPCに脳を実際に再構築したり,ニューロンの活動のシミュレーションを行い,「研究者がおこなっている脳研究を実際に体験」することで,研究の醍醐味,そして苦労も味わいながら,ニューロンと脳について学習できるように構成した。
 (中略)
 本書の利用の仕方は,読者の皆さんの興味によってさまざまである。昆虫の感覚や脳,行動の基礎と最新情報を知りたい方は,「第1部 昆虫脳の基礎知識」と「第4章 なぜ,カイコガを使うのか?」をご覧いただければ十分である。昆虫の脳研究のさまざまな方法に触れたい方は,「第2 部 昆虫脳の研究手法」を見ていただきたい。なかでも「昆虫操縦型ロボット」,「サイボーグ昆虫」などユニークな研究に触れてみたい方は,「第4章 なぜ,カイコガを使うのか?」から読み進めるとよい。また,脳をとにかくコンピュータ上に作ってみたい方は,「第3部 昆虫脳をつくる」から読み進め,解説された手順に従って脳を構築していただきたい。また,ニューロンや神経回路(脳)のシミュレーションに興味があり,プログラムを理解し実際の活用を考えている方は,「第10章 昆虫脳シミュレーション」から読み進めてもよい。

目次

推薦のことば
はじめに
目 次
第1部昆虫脳の基礎知識
 第1章「昆虫の脳をつくる」意味
  1.1 ヒトの脳をコンピュータでシミュレーションする
  1.2 昆虫脳は地球環境標準型
  1.3 昆虫脳はヒトの脳シミュレーションのテストベッド
  1.4 脳のリアルタイムシミュレーションの重要性
  1.5 昆虫脳のリアルタイムシミュレーションを目指して:昆虫脳をつくる意味
 第2章ニューロンの形とはたらき
  2.1 脳の起源と進化
  2.2 ニューロンの形
  2.3 ニューロンのはたらき
 第3章昆虫の感覚・脳・行動
  3.1 昆虫の神経系:頭部・胸部・腹部に分散した神経節
  3.2 頭部・胸部・腹部に分散した神経節のはたらき
  3.3 昆虫脳はニューロンがつくるモジュール構造からできている
  3.4 触角葉の構造と機能:匂いの識別機能を持つ中枢
  3.5 キノコ体の構造と機能:匂いの学習に関係する中枢
  3.6  昆虫の脳内の3 つの経路:反射,定型的行動パターン,学習行動を起こす経路
第2部昆虫脳の研究手法
 第4章なぜ,カイコガを使うのか?
  4.1 カイコガ
  4.2 匂い源の探索行動
  4.3 カイコガの適応能力
  4.4 匂い源探索行動を起こすカイコガの感覚と脳のしくみ
 第5章昆虫脳の分析手法
  5.1 単一ニューロンの計測
  5.2 多ニューロンの計測
  5.3 分子遺伝学的手法
 第6章昆虫脳データベース
  6.1 ニューロインフォマティクス
  6.2 昆虫ニューロンデータベース
  6.3 無脊椎動物脳プラットフォーム
  6.4 無脊椎動物脳プラットフォームの利用例
  6.5  昆虫科学を全国に広める:IVB-PF を利用した大学・科学館・高校の連携
 第7章脳 の 計 算 手 法
  7.1 脳 の モ デ ル 化
  7.2 神経細胞・神経回路シミュレータ
  7.3 計算ハードウェア
第3部昆虫脳をつくる
 第8章脳地図作成の概要とソフトウェア
  8.1 脳白地図と脳地図
  8.2 脳地図作成のためのソフトウェア環境
  8.3 標準脳(脳白地図)の構築の概要
  8.4 脳内領域の抽出と標準脳へのレジストレーションの概要
 第9章標準脳の作成の実際
  9.1 カイコガ標準脳(脳白地図)の構築
  9.2 セグメンテーションと標準脳へのレジストレーション
  9.3 SIGEN を用いたニューロンのセグメンテーション
  9.4 KNEWRiTE を用いたニューロンのセグメンテーション
  9.5 ニューロンの標準脳へのレジストレーション
  9.6 ニューロン応答のシミュレーション
 第10章昆虫脳シミュレーション
  10.1 神経細胞活動のメカニズム
  10.2 NEURON
  10.3 ホジキン-ハクスリー方程式のシミュレーション
  10.4 ケーブルモデルのシミュレーション
  10.5 複数コンパートメントモデルでのシミュレーション
  10.6 コンパートメントメカニズム
  10.7 神経回路シミュレーション
  10.8 複雑な形態を含んだ神経回路シミュレーション
  10.9 試験的なカイコガ脳の前運動中枢シミュレーション
  10.10 カイコガ全脳シミュレーションとその課題
  10.11 計算性能というもう1 つの大きな壁
あとがき
引用・参考文献
索 引

執筆者紹介

○編著者紹介
神崎亮平(東京大学教授)
1957年和歌山県生まれ.専門は神経行動学.カイコガのフェロモン源探索行動の研究や,昆虫制御型ロボット(サイボーグ昆虫),スーパーコンピュータによる大規模脳シミュレーションなどで知られる。
主な著書:『サイボーグ昆虫、フェロモンを追う』(岩波書店,2014),『ロボットで探る昆虫の脳と匂いの世界―ファーブル昆虫記のなぞに挑む 』(フレグランスジャーナル社,2009),『昆虫ロボットの夢』 (農山漁村文化協会,1998)

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