シリーズ〈これからの基礎物理学〉 2 初歩の量子力学を取り入れた 力学

窪田 高弘(著)

窪田 高弘(著)

定価 3,740 円(本体 3,400 円+税)

A5判/240ページ
刊行日:2017年12月15日
ISBN:978-4-254-13718-7 C3342

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内容紹介

古典力学と量子力学の有機的な接続に重点を置き,二つの世界を縦横に行き来することで力学理論のより深い理解を目指す新しい型の教科書。解析力学による前期量子論の構築という物理学史的な発展を遠景に,知的刺激に溢れる解説を展開。

編集部から

学部初年度~2年次に履修する古典力学の内容を,量子力学の初歩を導入しつつ解説するテキスト。マクロな世界(=古典力学)とミクロな世界(=量子力学)の連続性が理解できる画期的テキスト。

◎刊行にあたって
編集委員
鹿児島誠一・米谷民明
 本シリーズは,理工系・生命系における学部1・2 年生向けの物理教育を現代的内容へと抜本的に改めることを目指して企画された。大学の理科系専門課程を終えて社会に巣立つ人材に対し,現代人共通の科学的素養としての物理学の知識を提供することがそのねらいである。
 従来,理科系の物理教育では,共通科目として古典力学,古典電磁気学,熱力学が教えられてきた。これらが現代物理学の基礎であると同時に,科学・工学全般の基礎ともなっていることは言うまでもない。一方,科学技術の発展にともなって,これまで物理系学科の専門教育で講じられてきた量子力学,相対論,統計力学についても,その初歩的な考え方は理科系共通の基礎知識となりつつある。また,これらの“少し進んだ”内容を取り入れることにより,様々な物理的概念にいっそう明確な基礎づけがなされ,理解が深まるであろう.本シリーズは,こうした考えの実践である。
 今後,物理学の体系の素晴らしさや応用の広がりを伝え,さらなる興味をかき立てるような物理教育がますます望まれる。本シリーズが物理学の現代的な学び方を示す一つの指針となることを期待する。

目次

1.  古典力学と電子の量子論的振る舞い
 1.1 古典力学における惑星の運動の記述
 1.2 点粒子としての電子
 1.3 電子の波動性
 1.4 粒子であってかつ波であるということ
 1.5 電子のトンネル効果
 1.6 質量および長さの単位

2.  ベクトルの微分,座標系,運動学
 2.1 速度ベクトル,加速度ベクトル
 2.2 ベクトルの内積と外積
 2.3 直交座標
 2.4 球座標
 2.5 円筒座標

3. 古典力学の基礎
 3.1 力のベクトル
 3.2 運動方程式
 3.3 運動エネルギー
 3.4 角運動量ベクトル

4. 一様磁場中の原子内電子の運動
 4.1 ゼーマンの発見
 4.2 ラーモア振動数
 4.3 異常ゼーマン効果

5. クーロン斥力によるアルファ粒子の散乱
 5.1 ガイガー・マースデンの実験
 5.2 運動方程式,運動量保存則,エネルギー保存則
 5.3 重心座標と相対座標
 5.4 2粒子系の角運動量
 5.5 球座標での相対運動の運動方程式
 5.6 双曲線軌道
 5.7 散乱断面積
 5.8 量子力学におけるラザフォード散乱

6. クーロン引力のもとでの電子の運動
 6.1 水素型原子のケプラー問題
 6.2 遠心力,遠心力ポテンシャル
 6.3 楕円軌道
 6.4 ケプラーの第3法則

7. 古典力学と幾何光学
 7.1 最速降下線
 7.2 フェルマーの原理
 7.3 屈折の法則の一般化
 7.4 光線の経路と1階の連立微分方程式
 7.5 アイコナール方程式
 7.6 モーペルチュイの原理, ヤコビの原理

8. 物質波から波動力学へ
 8.1 伝搬する波の方程式
 8.2 波動光学と幾何光学
 8.3 波の群速度
 8.4 ド・ブロイの関係式
 8.5 シュレーディンガー方程式
  8.5.1 波動力学への飛躍
  8.5.2 ハミルトン・ヤコビ方程式との関係
  8.5.3 交換関係
 8.6 角運動量
 8.7 調和振動子の量子力学的取り扱い (その1)

9. 剛体の力学と電子スピン
 9.1 剛体の記述法
 9.2 剛体の運動エネルギー
 9.3 剛体の角運動量
 9.4 剛体の運動方程式
 9.5 磁場中での磁石の回転
 9.6 シュテルン・ゲルラッハの実験
 9.7 電子スピンの記述法
 9.8 状態の重ね合わせ
 9.9 磁場中での電子スピンの運動
 9.10 スピンの流れ

10. オイラー・ラグランジュ方程式
 10.1 広義座標,広義の力
 10.2 ラグランジュ関数
 10.3 オイラー・ラグランジュ方程式の座標変換不変性
 10.4 広義運動量
 10.5 エネルギー保存則
 10.6 電磁場中の荷電粒子
 10.7 電子と電磁場の相互作用と量子力学

11. ハミルトンの運動方程式
 11.1 正準方程式
 11.2 ハミルトンの原理
 11.3 正準方程式と変分原理
 11.4 正準変換
 11.5 母関数
 11.6 正準変換の具体的な例
 11.7 無限小の時間発展と正準変換
 11.8 正準不変量
 11.9 ポアソン括弧の諸性質
 11.10 角運動量とポアソン括弧

12. ハミルトン・ヤコビ方程式
 12.1 ハミルトン・ヤコビ方程式と量子力学
 12.2 ヤコビの解法
 12.3 調和振動子
 12.4 ケプラー運動
 12.5 時間発展と正準変換

13. ボーアの原子模型
 13.1 黒体輻射の法則
 13.2 原子の出す光
 13.3 ボーア模型の基本的な仮定
 13.4 電子の周回運動の振動数
 13.5 対応原理
 13.6 角運動量の量子化
 13.7 ド・ブロイ波と量子条件
 13.8 シュレーディンガー方程式を用いた水素原子の取り扱い

14. 断熱不変量と断熱仮説
 14.1 断熱不変量の簡単な例
 14.2 ゼーマン効果と断熱不変量
 14.3 エーレンフェストの断熱定理
 14.4 調和振動子再考
 14.5 調和振動子の場合の作用変数と角変数
 14.6 断熱仮説

15. ゾンマーフェルトの量子条件
 15.1 調和振動子の量子論とプランクの公式
 15.2 ケプラー運動
  15.2.1 エネルギー準位
  15.2.2  面積速度の量子化
  15.2.3  方向量子化
  15.2.4 離心率の量子化
 15.3 水素型原子でのゼーマン効果
 15.4 水素型原子におけるシュタルク効果
  15.4.1 電場中の原子の出す光
  15.4.2 放物線座標
  15.4.3 電場による電子のエネルギーのずれ
  15.4.4 2次のシュタルク効果
  15.4.5 座標系選択の問題

16. 角変数と作用変数
 16.1 補題
 16.2 変数分離可能な場合
 16.3 角変数,作用変数への正準変換
 16.4 多重周期運動
 16.5 作用変数の断熱不変性
 16.6 角変数,作用変数の価値

17. 古典力学における摂動論と量子力学
 17.1 分子による光の吸収と放出
 17.2 振動する電場中の電子:予備的考察
 17.3 摂動ハミルトン関数:1自由度の場合
 17.4 摂動効果を取り入れるための正準変換
 17.5 分散の古典論
 17.6 公式(17.2)の再吟味
 17.7 多自由度の場合の摂動論
 17.8 クラマースの公式

18. 行列形式の量子力学
 18.1 座標と運動量の交換関係
 18.2 ポアソン括弧と交換関係
 18.3 ハイゼンベルクの運動方程式
 18.4 調和振動子の量子力学的取り扱い (その2)

A. 位相積分の公式
 A.1 積分公式 (I)
 A.2 積分公式 (II)

執筆者紹介

【編集】
鹿児島 誠一
米谷 民明

【著者】
窪田 高弘(前大阪大学)

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