ⓔコラム3-3-3 咽頭知覚受容

 嚥下反射の引き金の役割をする感覚受容は咽頭の触覚であり,それが嚥下にかかわる感覚受容のなかで最も重要なものの1つであると考えられる.咽頭粘膜の触覚は無毛皮膚の触覚受容と同じ構造あるいは似た構造の器官が触覚をつかさどっていると考えられる1).無毛皮膚の触刺激を感知する受容器としては,代表的なものとしてMeissner小体,Merkel細胞,Pacini小体,Ruffini終末があり,それらあるいは似た構造物が咽頭粘膜にも存在していると考えられている1).そして咽頭粘膜にはそれらの触感覚受容器に加えて,別の独立した神経線維として自由神経終末が存在している.その自由神経終末上には温度や化学刺激に対して受容する温度感受性 (TRP) 受容体が存在している.したがって咽頭粘膜は触覚の感知に加えて,温度や化学刺激なども感知している.つまり冷たいもの,熱いものまたは香辛料が含まれている食物では触覚と同時に自由神経終末を活性化することになり,非常に強い刺激が延髄嚥下中枢に送られることとなる (図1).

図1 咽頭粘膜の受容器.

〔海老原 覚〕

■文献

  1. Ebihara S: Pharyngeal sensation and dysphagia in aspiration pneumonia. Toho J Med, 2019; 5: 33–39.