ⓔコラム10-1-3 単色X線等価画像とマルチ物質密度弁別画像

 dual energy CTとは,X線エネルギーにより物質の質量減弱係数が変化することを利用して,2つの異なるX線エネルギーから得たデータを用いて画像化する技術である.通常のCTでは連続エネルギースペクトルのX線を用いた画像が作成されるが,dual energy CTでは低~高エネルギーにおける任意のX線エネルギーの画像を作成することが可能であり,これを単色X線等価画像という.低keV画像 (低エネルギー画像) ではコントラストが向上するため,例えば,造影CTの際に造影剤の減量が可能となる.逆に高keV画像 (高エネルギー画像) では,金属アーチファクトなどの低減が可能になる.dual energy CTを用いると,各エネルギーレベル (keV) でのCT値をプロットしたスペクトラルHUカーブを作成することができる.このカーブは物質ごとに固有の曲線を呈するため,CTデータから組織の違いを類推することも可能である.

 マルチ物質密度弁別画像とは,特定の物質を強調あるいは抑制して画像化したもので,例えば,ヨード密度強調画像とは,各組織に取り込まれたヨード量のみを強調した画像である.ヨード密度強調画像を用いれば,CT値を用いるよりも鋭敏な造影効果を測定することが可能であり,また,随伴する出血や炎症などの影響 (CT値の変化) を受けることなく正確なヨード量の定量が可能となる.マルチ物質密度弁別画像は,正確な治療効果判定,悪性度の予測,遺伝子発現の予測などさまざまなポテンシャルをもった画像である1)

〔梁川雅弘〕

■文献

  1. Yanagawa M, Morii E, et al:Dual–energy dynamic CT of lung adenocarcinoma: correlation of iodine uptake with tumor gene expression. Eur J Radiol, 2016; 85: 1407–1413.