ⓔコラム11-1-8 胃内視鏡画像の変遷

 ファイバースコープ付き胃カメラ (図11-1-5A) は側視 (side viewing) で,口腔・咽頭から食道はほとんど観察ができなかったが,胃角 (angulus, incisura) から幽門前部 (prepyloric region) および幽門 (pylorus) の観察が容易に行えた.約2万本のファイバースコープを介して基本的に1人の内視鏡医が胃内を観察し,4 mmフィルムに撮影された写真が現像された後に,内視鏡読影カンファレンスなどで複数の医師が内視鏡写真を確認して内視鏡診断を行った.ファイバースコープ (図11-1-5B) は前方視 (または直視forward–viewing) で,口腔・咽頭から食道・胃および十二指腸の一部まで観察できるようになったため,パンエンドスコープ (panendoscope) ともよばれた.しかし胃角部小弯 (lesser curvature,lesser curve) や幽門前庭部後壁 (posterior wall) などは観察困難であり,側視鏡と比べて胃病変の見落としが心配されていた.また2万~3万本のファイバースコープを介して1人の内視鏡医が観察し,16 mmフィルムに撮影された写真が現像された後に,複数の医師がそれらの写真を読影して内視鏡診断を行うため,内視鏡画像の画質が悪いうえに複数の医師によるリアルタイムな内視鏡診断を行うことはできなかった.

〔中村哲也〕