ⓔコラム11-4-21 輸入脚症候群

症状

 強い上腹部痛,嘔吐がみられる.

原因・病態

 完全閉塞のため急性の経過をとる急性輸入脚症候群 (輸入脚閉塞症) と不完全閉塞のため症状の悪化と軽快を繰り返す慢性輸入脚症候群に分類される.

ⅰ) 急性輸入脚症候群: 突然発症する上腹部膨隆・上腹部痛・無胆汁嘔吐など.術後1~2週間以内に起こり,輸入脚の壊死・穿孔・腹膜炎に対し緊急処置を要する1,2)

ⅱ) 慢性輸入脚症候群: 胆汁,膵液などが十二指腸や輸入脚内に停滞し,食後1時間以内に腹痛や背部痛を生じる.急性輸入脚症候群とは異なり輸入脚内容が胃内へ逆流し大量の胆汁性嘔吐1)をきたす.吐物に食物残さはほとんど含まない.嘔吐後は症状が急速に消失する.

原因・病態

 Billroth–ⅡまたはRoux–en–Y法再建後の輸入脚に捻転,屈曲,閉塞~狭窄,癒着,内ヘルニア,腸重積,腫瘍,吻合部狭窄などによる閉塞機転が生じ,輸入脚 (吻合部の十二指腸側の腸管) に胆汁・膵液を含む十二指腸液が進行性に貯留し拡張をきたす1,2).発生頻度は1.0~1.5%とされる.輸入脚の壊死・穿孔をきたすと致命的になる.

術式との関連

 輸入脚の過短 (屈曲) ・過長 (捻転),結腸前再建 (内ヘルニア) などが要因となる3)

診断

 輸入脚を形成する胃の手術が行われ,上記の症状を認めた場合に本症を疑う.腹部造影CT検査が有用である.

治療

ⅰ) 急性輸入脚症候群 (輸入脚閉塞症): 内視鏡的狭窄解除が可能なこともある.内ヘルニア,絞扼,穿孔・腹膜炎が疑われる場合は緊急手術を行う.

ⅱ) 慢性輸入脚症候群: 脂肪制限食とし,消化酵素薬を投与する.栄養障害の予防・治療に高蛋白高カロリー食・高カロリー輸液を,また必要に応じて鉄剤,VB12,抗菌薬を投与する.保存的治療が原則だが治療抵抗性の場合は内視鏡的拡張術,手術 (癒着・屈曲による通過障害の解除,Braun吻合の付加など) も行われる.

〔中田浩二〕

■文献

  1. 吉澤奈央,和田郁雄,他:消化管 胃切除後症候群,ダンピング症候群,輸入脚症候群,盲係蹄症候群.外科,2011; 73: 1322–1326.

  2. 下地英明,西巻 正,他:小腸 輸入脚症候群に対する手術.手術,2011; 65: 807–811.

  3. 松木 淳,梨本 篤:術後合併症とその管理 消化器系 輸入脚症候群.消化器外科,2012; 35: 890–891.