ⓔコラム12-24-1 さまざまな胆道寄生虫症

回虫症

疫学

 寄生部位は空腸が87.2%と多い1).胆道系は少ない.

病態生理

 アルカリ性や小孔に好んで侵入する習性がある.

診断

 迷入例では虫卵は確認不能2)であり,雄成虫のみの感染や未成熟のオスの寄生は虫卵を検出できない.腹部USの横断像では周囲高エコーで内部低エコーを示す輪状エコー像 (bull’s eye echo)3)がみられる.

治療

 選択順に記載する.

①ピランテルパモ酸塩内服 (100 mg錠),10 mg/kg/日,分1,単回服用.小児用にドライシロップがある.副作用はほとんどない.妊婦への安全性は確立していない.

②メベンダゾール内服 (100 mg錠) (保険適用外),200 mg/日,分2,3日間.20 kg以下の小児に対しては半量投与.副作用はほとんどない.催奇形性があり,妊婦には禁忌である.また,乳汁へ移行するため授乳中も禁忌である.

③アルベンダゾール内服 (200 mg錠) (保険適用外),400 mg/日,分1,単回服用.小児への安全性は確立していない.催奇形性があり,妊婦には禁忌である.

④サントニン内服 (1000 mg末),200 mg/日,分2,1日間.空腹時内服.肝障害では内服禁忌である.妊婦への安全性は確立していない.6歳未満は40 mg/日,6~12歳未満は80~160 mg/日とする.

肝吸虫症

疫学

 近似種のタイ肝吸虫 (タイ北部・東北部,カンボジア,ラオス,マレーシアが好発地域) は長期寄生により肝内胆管癌との関連が疫学的に証明されている4,5)

診断

 肝生検により肝内胆管枝の成虫断面の確認6),腹腔鏡検査では黄白色斑状変化,胆管拡張所見が認められる7)

肝蛭症

原因・病因

 メタセルカリアは水性植物 (セリ,ミョウガ,クレソンなど) や牧草に付着する.

治療

 triclabendazole内服 (国内未承認) は10 mg/kg/日,食直後,単回服用,重症例では20 mg/kg/日,分2回,食直後に単回投与とする.小児への内服は避ける.

 プラジカンテル (保険適用外) は無効例が多い.

クリプトスポリジウム症,ジアルジア症 (ランブル鞭毛虫) 【⇨7-11-8,7-11-3】

疫学

 水道水汚染による感染性下痢症の原因として知られている.クリプトスポリジウム症では肝・胆道系感染は免疫不全状態で報告されている.ジアルジア症 (ランブル鞭毛虫) は不顕性感染の場合もある.

原因・病因

 感染性幼虫オーシストの経口摂取による.

病態生理

 十二指腸,空腸,回腸に感染する病原性腸管寄生虫症であるが,免疫不全状態においては,逆行性感染によって,胆道炎を合併することがある.

臨床症状

 繰り返す下痢と慢性胆道炎では,免疫学的背景と原虫感染の有無の確認が必須である.なお,免疫不全がなければクリプトスポリジウム症は慢性化しない.

診断

 クリプトスポリジウム症は糞便検査,十二指腸液,胆汁からはオーシストが確認される.ジアルジア症は検便から栄養型および囊子型 (シスト) が認められる.

治療

ⅰ) クリプトスポリジウム症: 対症療法が基本となる.なお,免疫不全における薬剤の治療効果にはエビデンスがない.

 選択順に記載する.

①nitazoxanide内服 (500 mg錠) (国内未承認),1000~2000 mg/日,分2,14日間 (健常者は3日間).

②パロモマイシン内服 (250 mg錠) (保険適用外),1500~2250 mg/日,分3,14日間+アジスロマイシン内服 (600 mg錠) (保険適用外),600 mg/日,分1,14日間.

ⅱ) ジアルジア症: 選択順に記載する.

①メトロニダゾール内服 (250 mg錠),750 mg/日,分3,5~7日間.

②チニダゾール内服 (200 mg・500 mg錠) (保険適用外),2000 mg/回,単回内服.

③アルベンダゾール内服 (200 mg錠) (保険適用外),400 mg/日,分1,5日間.

④パロモマイシン内服 (250 mgカプセル) (保険適用外),1500 mg/日,分3,5~10日間.

⑤nitazoxanide内服 (500 mg錠) (国内未承認),1000 mg/日,分2,3日間.

 治療薬の詳細については,熱帯病治療薬研究班のホームページ (https://www.nettai.org) より,「寄生虫症薬物治療の手引き」2020年8月改訂版を参照すること.

〔河上 洋〕

■文献

  1. 石井 敦,根本正和,他:急性膵炎にて発症した胆道内回虫迷入症の一例.埼玉県医学雑誌,2005; 39: 380–383.

  2. 宇賀昭二:回虫,鞭虫,蟯虫.臨床と微生物,2013; 40: 335–339.

  3. Cremin BJ: Real–time ultrasound in paediatric biliary ascariasis. Case reports.S Afr Med J, 1982; 61: 914–916.

  4. 齋藤貴史,小野寺 滋,他:肝吸虫症.別冊日本臨牀 肝・胆道系症候群 (肝臓編 (上)) 第2版 (井廻道夫編),日本臨牀社,2010; 110–112.

  5. Haswell–Elkins MR, Satarug S, et al: Opisthorchis viverrini infection in northeast Thailand and its relationship to cholangiocarcinoma. J Gastroenterol Hepatol, 1992; 7: 538–548.

  6. 所 正治:寄生虫性肝胆系疾患.肝胆膵,2008; 57: 565–570.

  7. 八木澤 仁:肝吸虫症・異形吸虫類.治療,1991; 73: 2427–2429.