ⓔコラム12-7-2 PBCの病態を伴う症例

 AIHとPBCの臨床像をあわせもつ”オーバーラップ症候群”の診断には,AIHの臨床的特徴 (①ALTが基準値上限の5倍以上,②IgGが基準値上限の2倍以上または抗平滑筋抗体陽性,③組織学的に単核球浸潤を伴うインターフェイス肝炎像がみられる),およびPBCの臨床的特徴 (①ALPが基準値上限の2倍以上またはγ–GTPが基準値上限の5倍以上,②抗ミトコンドリア抗体陽性,③組織学的に胆管病変を伴う) のそれぞれ2項目以上を満たすとの基準 (Paris Criteria)1)が用いられることが多い.一方,International Autoimmune Hepatitis Group (IAIHG) はAIHとPBCの病像を兼ね備えた病態は存在するが”オーバーラップ症候群”という独立した疾患概念は存在せず,いずれかの主たる病態に分類されるととらえている2,3)

〔大平弘正〕

■文献

  1. Chazouillères O, Wendum D, et al: Primary biliary cirrhosis–autoimmune hepatitis overlap syndrome: clinical features and response to therapy. Hepatology, 1998; 28: 296–301.

  2. Boberg KM, Chapman RW, et al: Overlap syndromes: the International Autoimmune Hepatitis Group (IAIHG) position statement on a controversial issue. J Hepatol, 2011; 54: 374–385.

  3. 厚生労働省難治性疾患政策研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班:自己免疫性肝炎 (AIH) 診療ガイドライン (2016年),2017.