ⓔコラム12-7-3 アザチオプリンとNUDT15遺伝子多型

 アザチオプリンの副作用のなかで,服用開始後早期に発現する重度の急性白血球減少と全脱毛が,本剤の代謝に関連するNUDT15遺伝子多型と関連することが明らかとなっている1)NUDT15 Arg139Cys遺伝子多型をホモ接合体 (Cys/Cys) で有する頻度は1%程度,ヘテロ接合体 (Arg/Cys,Cys/His) で有する頻度は20%程度と報告されている.また,アザチオプリン製剤投与歴のある炎症性腸疾患患者1291例についてNUDT15 Arg139Cys 遺伝子多型と有害事象に関する調査では,Cys/Cysでは白血球減少が49 例中45例,脱毛が49例中46例,Arg/Cysでは白血球減少が275例中94 例で認められたと報告されており,注意喚起がなされている2)

 したがって,新規にアザチオプリンを使用する際は,NUDT15遺伝子型検査にてCys/Cys型の場合,重篤な副作用が出現するリスクが非常に高いため,原則としてアザチオプリンの使用を回避する必要がある.一方,Arg/Cys,His/Cysの場合には,低用量 (通常の半量程度) からの使用を検討する.なお,これらの副作用のリスクが低いとされるArg/Arg,Arg/His型の場合でも,定期的な副作用モニタリングが必要である3)

〔大平弘正〕

■文献

  1. Yang SK, Hong M, et al: A common missense variant in NUDT15 confers susceptibility to thiopurine–induced leukopenia. Nat Genet, 2014; 46: 1017–1120.

  2. Kakuta Y, Kawai Y, et al: NUDT15 codon 139 is the best pharmacogenetic marker for predicting thiopurine–induced severe adverse events in Japanese patients with inflammatory bowel disease: a multicenter study. J Gastroenterol, 2018 ; 53: 1065–1078.

  3. 厚生労働省難治性疾患政策研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班:自己免疫性肝炎 (AIH) 診療ガイドライン (2016年),2017.