ⓔコラム13-1-1 関節リウマチの画像診断

 関節障害の評価は手術時期の決定とともに薬物治療法の変更・選択にも重要な役割をもつ.画像診断法としてはX線を利用した単純X線写真,断層写真,造影X線写真,X線CT,その他にMRI,超音波診断装置,ポジトロン断層撮影 (positron emisson tomography: PET) などが挙げられる.RA画像診断の基本となるのは単純X線写真である.骨関節を対象とするX線診断法の原理はX線吸収性の違い,四肢関節組織ではカルシウム沈着集積度の違いによるX線吸収度の違いによる画像化である.骨変化の描出にすぐれ,非カルシウム沈着組織の評価には向かない.逆に軟骨下骨,骨の形状把握では単純X線写真による評価にまさるものはない.一方MRIは基本的にはプロトン分子を観察することから質的評価が可能である.軟部組織の描出にすぐれ,初期病変の把握に向くとされている.

 X線撮影で関節を簡便に評価するときにはSteinbrocker分類が広く用いられている.RA関節病変では骨破壊と軟骨破壊が同時進行するので,関節裂隙狭小化と骨破壊像 (骨びらん像,骨萎縮像) の組み合わせによって進行程度が評価可能となる.Larsen分類,Steinbrocker分類ともにこの組み合わせによる評価方法と考えることができる.Larsen分類では各関節に標準写真が決められており,それを参考に評価する (図1,表13-1-11).Sharp法 (正確にはmodified Sharp法) では骨びらん,打ち抜き像,関節裂隙の狭小化などの所見を手関節〜手と足部の正面X線写真を用いて,この関心領域の関節に限り点数化を行う (図2).点数化されるので病態の細かい変化の把握にすぐれる.従来の評価法に比較して初期病変を細かく評価できる点から薬効検定に用いられることが多い.手,足以外の関節は評価されないので全身の関節症変化の評価とはいいがたいが,すべての関節変化を評価することは不可能である点から広く一般的に用いられている.一方で,この評価法は大関節破壊とも相関を示すことが報告されている (図3).

図1 Larsen grade に用いられる標準写真. 各関節について標準写真が規定されているため,それを参考にgradeを決定する.手関節の標準写真を示す.
図2 Sharp法による画像評価 (van der Heijde: Baillieres Clin Rheumatol, 1996; 10: 435–453より作成). 1971年にSharp らにより提唱されたSharp法は,両手正面X線画像での骨びらんと関節裂隙狭小化のスコアから関節を評価する方法である.現在,足正面X線画像を評価対象として加えたvan der Heidjeによるmodified Sharp法が汎用されている.薬剤の開発臨床試験などでは骨関節破壊防止効果判定基準として汎用されている.
図3 大関節変化と小関節変化の関係 (Drossaers–Bakker KW: Rheumatology, 2000; 39: 998–1003より作成). Sharp スコアとLarsenによる大関節関節破壊スコアによって示される大関節の変化を示す分散図 (scatter plot).105例のRA患者を前向きに12年間フォローアップした研究データからの検討結果.Sharpスコアで示される小関節にびらんを認めない患者には大関節障害がみられないことが理解できる.

〔石黒直樹〕