ⓔコラム14-3-6 膜性腎症の分類

 実臨床では,一次性と二次性の鑑別はしばしば困難である.また原因抗原のいくつかが明らかになった現在,こうした分類方法自体に疑問が呈されている.

 悪性腫瘍に発現する抗原,例えば胎児抗原CEAに対する自己抗体が産生され,その抗体が腎糸球体基底膜に沈着して膜性腎症が惹起されることがある.こうした症例は,悪性腫瘍に伴う二次性膜性腎症と判断される.しかし,悪性腫瘍を有する患者が抗PLA2R抗体陽性の膜性腎症を発症した場合は,一般的に偶発的に一次性膜性腎症を併発したものと考えられる.しかし,抗THSD7A抗体陽性の場合は判断が難しい.悪性腫瘍の組織にTHSD7A抗原が発現しており,血中に抗THSD7A抗体が検出され,腎糸球体にも抗THSD7A抗体が沈着していることが証明された症例が報告されている1).この症例の場合は,悪性腫瘍により抗THSD7A抗体の産生が惹起され,二次的に膜性腎症を発症したものと考えられる.悪性腫瘍を手術的に除去した場合,あるいは化学療法が奏効した場合,併発した膜性腎症も軽快あるいは治癒することがある.この場合も,悪性腫瘍が膜性腎症の原因であったと結論することは必ずしも容易ではない.膜性腎症症例の約30%は自然寛解がみられるからである.つまり悪性腫瘍の有無や自己抗体の有無,さらに臨床経過から,一次性と二次性を明確に区別することはできない2)

 ループス腎炎に伴う抗PLA2R抗体陽性の膜性腎症の分類についても意見が分かれている.中国からの報告では,全身性エリテマトーデスには少なからず抗PLA2R抗体陽性の膜性腎症症例があり,二次性膜性腎症に分類している3).もともとSLE症例は各種自己抗体を産生しやすい集団である.これを二次性に分類すべきか,偶発的に合併したものと考え一次性に分類すべきか,議論が分かれる.

 単純に,原因不明のものを一次性に,原因が判明したものを二次性に分類するべきという考え方がある.例えば,巣状分節性糸球体硬化症では,病因となる遺伝子変異が判明した症例は病変が腎臓に限局していても,一次性でなく二次性に分類されている.この考え方に従うと,抗PLA2R抗体や抗THSD7A抗体が陽性の膜性腎症は二次性に分類されることとなる.一次性膜性腎症の原因抗原がPLA2Rであるといういい方は自己矛盾することとなる.今後は,一次性・二次性という分類ではなく,抗PLA2R抗体陽性膜性腎症,抗THSD7A抗体陽性膜性腎症,両者陰性膜性腎症というように,原因抗原による分類が主流となる可能性がある.

〔丸山彰一〕

■文献

  1. Hoxha E, Wiech T, et al: A Mechanism for Cancer–Associated Membranous Nephropathy. N Engl J Med, 2016; 374: 1995–1996.

  2. Hunley TE, Corzo D, et al: Nephrotic syndrome complicating alpha–glucosidase replacement therapy for Pompe disease. Pediatrics, 2004; 114: e532–e535.

  3. Qin W, Beck LH, et al: Anti–phospholipase A2 receptor antibody in membranous nephrcpathy. J Am Soc Nephrol, 2011; 22: 1137–1143.