ⓔコラム14-6-4 STEC–HUSと大規模集団感染

 STECは食品などを通じて感染することが多く,わが国では生または加熱不十分な牛肉,牛レバー,ハンバーグなどが感染源として認識されてきた.しかし,諸外国ではむしろ,汚染された水,汚染された野菜 (サラダ,漬物,芽野菜など) などが感染源となることが多い.また,水や芽野菜を介した感染は,牛肉を介した感染に比較し大規模になりやすい.2011年のドイツに端を発した欧州におけるO104:H4による大規模集団感染は,汚染された芽野菜が原因と推定されているが,1996年の9500人が感染した堺市のO157:H7による大規模感染も,給食に供された芽野菜の可能性が論議された1).ドイツ 国内での感染者は3842例,うちHUS発症が855例 (22%) 死亡53例とHUSの発症が異常に多く予後不良であった.O104:H4は,STXを産生しないとされてきた,腸管凝集性大腸菌 (enteroaggregative Escherichia coli: EAEC) に分類され,かつSTX2をコードし多剤耐性遺伝子 (extended spectrum β–Lactamase: ESBL) も付加された特殊な病原性大腸菌であった.腸管凝集性大腸菌は塊状に増殖するため,毒素の産生が多くなった可能性が指摘されている.このようにSTEC–HUSは,重大な大規模集団感染を起こしうる細菌である.

〔伊藤秀一〕

■文献

  1. Michino H, Araki K, et al: Massive outbreak of escherichia coli O157: H7 infection in schoolchildren in Sakai City, Japan, associated with consumption of white radish sprouts. Am J Epi demiol, 1999; 150: 787–796