ⓔコラム15-4-11 甲状腺未分化癌の予後因子と治療方針

 甲状腺未分化癌の発生頻度は全甲状腺悪性腫瘍の1~2%程度とまれである.診断後の平均生存期間は3~6カ月程度,1年生存率は5~20%と最も予後不良な悪性腫瘍の1つである.

 未分化癌に対しては従来,外科的根治切除に加え,放射線外照射,多剤併用化学療法等の集学的治療を行い得た患者の中に比較的長期間生存する症例をわずかに認めてきた.しかし,未分化癌患者のほとんどは高齢者であり,こうした積極的治療が生存期間の延長に寄与しないばかりか,かえって患者のQOLを損なう場合も少なくない.積極的にアグレッシブな治療を行うべきか,quality of survivalを重視して緩和治療中心に対応すべきかの判断基準として,prognostic index (PI) を用いた個別化治療が提案されている1).すなわち,1カ月以内の急性増悪症状,5 cmを超える腫瘍,遠隔転移,白血球1万/µL以上の4つの有意な予後不良因子のうち,その症例における該当する項目数をPIとし,その値が小さい症例には生存期間の延長を期待して積極的治療を勧めるが,PIが高い場合には緩和ケア中心に患者の苦痛をできるだけ除去するような治療を推奨するものである.

 未分化癌のようなorphan diseaseにおいては,単一施設での症例集積には限界があり,エビデンスレベルの高い診療方針の確立は不可能である.2009年1月,わが国における未分化癌の現状把握とエビデンス構築を目的とした多施設共同研究機構として,甲状腺未分化癌研究コンソーシアム (anaplastic thyroid carcinoma research consortium of Japan: ATCCJ) が設立された.そのデータベース解析においても,AJCC/UICC (American Joint Committee on Cancer/ Union for International Cancer Control) によるステージ分類第7版に含まれる2項目 (原発腫瘍の甲状腺外浸潤,遠隔転移) およびPIに含まれる4項目はいずれも有意な予後不良因子であった2).未分化癌の初期治療方針決定においてはステージ分類による病変の広がりの評価とPIなどの生物学的悪性度評価とを組み合わせた個別的戦略が推奨される.ステージと予後因子を考慮した治療方針は甲状腺腫瘍診療ガイドライン20183)にも反映されている.

 今後はATCCJによる医師主導型前向き臨床試験で検討されたパクリタキセル週1回投与法4)や分子標的薬として2015年に保険収載されたレンバチニブ5),さらにはBRAF阻害薬とMEK阻害薬の併用療法6)などの新規治療法を治療アルゴリズムにどのように当てはめていくのかが課題となる.

〔杉谷 巌〕

■文献

  1. Sugitani I, Kasai N, et al: Prognostic factors and therapeutic strategy for anaplastic carcinoma of the thyroid. World J Surg, 2001; 25: 617–622.

  2. Sugitani I, Miyauchi A, et al: Prognostic factors and treatment outcomes in anaplastic thyroid carcinoma: ATC research consortium of Japan cohort study for 677 patients. World J Surg, 2012; 36: 1247–1254.

  3. 甲状腺腫瘍診療ガイドライン作成委員会:甲状腺腫瘍診療ガイドライン2018.内分泌甲状腺外会誌,2018; 35(増刊号): 1–87.

  4. Onoda N, Sugino K, et al: The safety and efficacy of weekly paclitaxel administration for anaplastic thyroid cancer patients: a nationwide prospective study. Thyroid, 2016; 26: 1293–1299.

  5. Tahara M, Kiyota N, et al: Lenvatinib for anaplastic thyroid cancer. Front Oncol, 2017; 7: 25.

  6. Subbiah V, Kreitman RJ, et al: Dabrafenib and Trametinib treatment in patients with locally advanced or metastatic BRAF V600–mutant anaplastic thyroid cancer. J Clin Oncol, 2018; 36: 7–13.