ⓔコラム15-4-3 甲状腺ホルモン受容体(TR)のアイソフォームと機能

 TRには,2つの異なる遺伝子から由来するTRβとαのアイソフォームが存在する.さらにそれぞれにsplicing variant であるTRβ1,β2,β3,Δβ3とTRα1,α2,Δα1,Δα2が存在する.TRβ1,β2,β3,TRα1は,T3のリガンド結合ならびに転写活性化能があるが,TRα2は,C端側に変化があるためDNA結合能はあるがT3結合能はない.TRのアイソフォームは,臓器ごとにそれらの発現が異なる.TRα1は心臓や脳に多く,甲状腺ホルモンの心臓作用を介する.TRβ1はほとんどの臓器に発現するが,肝臓に多く甲状腺ホルモンによる脂質などへの作用に関与している.一方TRβ2は下垂体や視床下部に発現し,後述する視床下部–下垂体–甲状腺フィードバック機構に関与している.

〔堀口和彦・山田正信〕