ⓔコラム16-1-1 体内時計を考慮した代謝疾患の治療における今後の課題

 時計遺伝子の異常が生理的な代謝制御や肥満などの代謝疾患と密接に関連していることは,数々の知見によって支えられている.また近年,代謝疾患に対する体内時計の視点からの治療アプローチも注目されてきている.

 しかしながら,これまでの動物実験を中心とした研究は個々の時計遺伝子と疾患とのかかわりを検討したものが多数を占める.また,代謝異常は臓器レベルの時計遺伝子制御へ影響を与える.ゆえに,現時点では体内時計機構そのものが代謝疾患を引き起こすかについての明確な解答は得られていない.

 今後のさらなる研究により体内時計のメカニズムが解明され,これまで見過ごされてきた代謝制御の発見や代謝疾患の新たな治療へとつながっていくことが期待されている.

〔片桐秀樹〕