ⓔコラム17-10-18 疫学

 粗罹患率を年齢階級別に比較すると,男女とも20歳までの発症は0で,40歳代からしだいに増加,5歳刻みで75歳まで2倍ずつ増加し,男性は増加し続け85歳以上の階級で10万人中32.2人,女性は80~84歳の階級で最も高く10万人中22.7人に達する.粗罹患率の経年変化をみると,2010年頃までは年々増加していたがそれ以降は横ばいかむしろ低下傾向となっている.多発性骨髄腫 (MM) の年齢調整罹患率は10万人中2.4人 (男性2.9人,女性2.0人) であることから,総人口におけるMM罹患率上昇は高齢者人口の増加を反映していたと考えられる.癌統計の罹患データは4〜5年遅れで公表されるが,この遅れを数学的な手法で補正した癌統計予測によると,2018年1年間の骨髄腫予測罹患数は7800人である.MMによる総死亡者数は,2017年は男性2290人,女性2107人,全体では4185人,推定死亡率は人口10万人中男性3.77人,女性3.29人であった.日本骨髄腫学会に属する施設を対象にした3回にわたる後方視的調査研究によると,1990〜2000年と2001〜2012年,2013年~2016年に診断されたMM患者合計3022例の初診時年齢中央値は,男性67歳,女性68歳で,60~69歳の患者の占める割合が31.7%と最大であった.骨髄腫の罹患率には人種差があり,人口10万人当たりアフリカ系米国人11.7人/年,欧米白人5.2人/年,アジア人3.3人/年であったが,近年アジア人の罹患率は上昇している.

〔半田 寛〕