ⓔコラム17-5-1 フローサイトメトリーの陽性率の落とし穴

 陰性コントロールよりも強い蛍光強度があれば陽性として,陽性比率のみを情報としてみていると,疾患の本質を見逃すことがある.例えば,図1では,慢性にTリンパ球が増加している患者末梢血のフローサイトメトリーの一例であるが,リンパ球ゲートのうち,CD5,CD7それぞれの陽性率は健常人と変わりはなく,陽性比率だけのレポートを鵜呑みにしてしまうと正常という判断になってしまう.しかし実際には,CD5,CD7とも強陽性部分と弱陽性部分がこの患者では存在し,弱陽性部分が異常細胞の集団である.ここで留意すべきは,フローサイトメトリーの蛍光強度は通常ログスケールで示されるので,この強陽性と弱陽性集団を比較した場合,細胞1個当たりに発現している標的蛋白量は約10倍の差があり,通常の病理免疫染色では弱陽性部分は陰性と判定される可能性が高いということである.すなわち,フローサイトメトリーは定量性にも非常にすぐれた解析法であり,陽性率のレポートではなく常に生データとしてのdot plotを読む能力が臨床医には必要である.

図1 末梢血に単クローン性T細胞が増殖した症例 (川野宏樹,皆川健太郎,他:臨床血液,2012; 53: 785–787).

〔片山義雄〕