ⓔコラム18-21-1 骨格筋の形態と機能

 骨格筋内には筋線維の伸張を感知するセンサーである筋紡錘 (ⓔ図18-21-1) が存在し,これは筋が急激に伸ばされたときに筋を収縮させる伸張反射の受容器である.筋紡錘内の筋線維 (錘内筋) は筋収縮時にも筋紡錘が正しく筋の伸張変化を検出するために,γ運動ニューロンにより感度が調節されている.一方,腱にあるGolgi腱器官は過大な等尺性収縮時に危険を回避するため筋を弛緩させる指令を出すセンサーである.筋紡錘は筋線維と並列に存在するがゴルジ腱器官は筋線維に対して直列に並んでいる.

 筋は収縮にも弛緩にもエネルギーが必要であり,生体のエネルギー通貨と形容されるATPの産生系にはクレアチンリン酸系,グリコーゲン–乳酸系,有酸素系などがある.筋内にあるATPは少量であり運動によりすぐ枯渇してしまうため,筋線維内に高濃度に存在するクレアチンリン酸とADPによるローマン反応 (ⓔ図18-21-2) によりATPを産生する (クレアチンリン酸系).この産生機構によるATPは十数秒で枯渇するため嫌気性代謝であるグリコーゲン乳酸系によるATP産生に移行する.グリコーゲン乳酸系 (解糖系) は,酸素を消費せずにグルコースを代謝してATPを産生する.解糖系は運動開始時の筋の酸素不足の環境でATPの産生が可能であり,代謝産物として乳酸を産生する.続いて筋組織への酸素供給増加に伴い,ミトコンドリアの好気性エネルギー産生機構によりATPを産生する有酸素系に移行する.解糖系からTCA 回路へと代謝が進み,水素を還元型の補酵素の形で捕捉し電子伝達系でATPが大量に産生される.

 上腕二頭筋のタイプ1,2A,2B線維はおのおの約1/3ずつ存在しモザイク状に分布している (ⓔ図18-21-3).加齢や寝たきりによる廃用ではタイプ2線維が萎縮し,微小重力下ではタイプ1線維が萎縮する.骨格筋の加齢変化を表に示す (ⓔ表18-21-1).光学顕微鏡で明らかな変化,電子顕微鏡で確認できる変化,および通常の病理学的検査では検出しにくい変化もある.正常に近い17歳女性の生検筋 (ⓔ図18-21-4A) のHE,チトクロームc酸化酵素,酸ホスファターゼ,ATPaseの各染色では筋線維のサイズもそろっており,ミトコンドリア酵素活性も正常で,リソソーム (ライソゾーム) の活性はほとんどなく,筋線維タイプのサイズの違いも認められない.一方正常に近い83歳女性の生検筋 (ⓔ図18-21-4B) の同じ染色では,チトクロームc酸化酵素活性が一部の筋線維で低下し,type 2 fiber萎縮が出現している.リソソームのマーカー酵素といわれる酸ホスファターゼで筋膜直下に赤く染まるものはリポフスチンである.リポフスチンは加齢性色素ともよばれ,正常高齢者にみられることから病的意義はないと考えられてきたが,最近,酸化ストレスやオートファジー障害と関連する可能性も考えられている.

〔樋口逸郎〕