ⓔコラム2-2-2 予防の方策

 厚生労働省は食中毒の予防を細菌においては「つけない」「ふやさない」「やっつける」の3原則,ウイルスに関しては「持ち込まない」「ひろげない」「つけない」「やっつける」を原則としている.

 「つけない」:手指洗浄,消毒が大切であり,手洗いの原則の徹底,また水確保が困難な場合の消毒用ペーパータオルは有効であろう.調理台やまな板も汚染頻度が高いため,調理都度の消毒,また調理器具,箸などの使い回しは避けるべきである.

表1 食中毒細菌の発育温度特性と熱抵抗性 (清水 潮:食品微生物の科学 第2版,幸書房,2005; 127–140より作成).

 「ふやさない」:菌が増殖する時間,また温度に注意が必要である.至適温度では急速に菌が増殖するため,低温管理が必要である.表1に発育最低温度を示す.多くの菌は5℃以下で増殖が抑えられるが,リステリアやエルシニアのように0℃以下で発育する菌もみられる.また解凍などに時間を要する場合,発育最低温度をこえると菌によっては,急激に増殖することに注意が必要である.

 「やっつける」:熱抵抗性を表1に示す.食中毒を抑えるためには,細菌では中心温度75℃で1分間以上,ノロウイルスでは85~90℃で90秒間以上が目安である.しかし正確な温度の測定は困難であるため,中心部の色調など視覚的に判断することも有効とされる.ただ黄色ブドウ球菌のエンテロトキシンなど100℃30分間の加熱でも不活化されないこと,芽胞形成菌では加熱処理が無効であることも考慮しなければならない.

〔宮内雅人〕