ⓔコラム3-3-2 加齢による嚥下障害の要因

 通常の肉体の衰えと同じように,嚥下機能も加齢により衰えていく.その要因は図1に示すようにいくつかあり,まず①のどぼとけが下がって突出してくることに特徴づけられるように,喉頭の位置が低下しているため,嚥下するときの喉頭挙上が不十分になること,その他②咽頭収縮筋の収縮力が低下し,咽頭に唾液および食物が残留しやすくなること,また③上部食道括約筋を閉じている筋肉の機能不全も生じて,喉頭の閉鎖が不十分になることなどおもに嚥下筋関連の要因や,④口腔が汚れ,歯が欠損し,舌の運動機能が低下,咀嚼能力が低下といった歯科的要因に加えて,⑤咽頭粘膜の知覚感受能力の低下といった知覚機能の要因が関連している.

 このうち①~③と④の一部は嚥下にかかわる筋肉の衰えであり,嚥下サルコペニアとよばれる近年注目されているものである.筋力訓練が必要となる.また,④は主として口腔の問題であり口腔フレイルと呼ばれ,歯科医の介入が必要である場合も多い.さらに重要なのは,⑤の咽頭感覚の障害で,これにより嚥下反射の惹起の遅延につながり誤嚥となる.

図1 加齢により衰えていく嚥下機能.

〔海老原 覚〕