ⓔコラム5-6-1 視床下部,末梢組織の摂食調節機構

 室傍核には,摂食抑制物質であるCRF含有ニューロンが存在し,同部には外側野および弓状核からの神経入力がある.一方,室傍核からは食欲抑制に作用するヒスタミンニューロンなどに神経投射を認める.弓状核には摂食亢進物質であるNPY/AgRP含有ニューロン,および摂食抑制物質であるPOMC/CART含有ニューロンが存在する.これらはそれぞれ室傍核や外側野に投射し,室傍核のCRFやMC4Rを介する摂食抑制系と外側野のオレキシンやMCHを介する摂食亢進系に神経投射を認め,そのバランスが摂食行動を調節している.さらに,NPY/AgRP含有ニューロンおよびPOMC/CART含有ニューロンにはレプチン受容体が発現しており,レプチンから前者は抑制性に,後者は促進性に制御されている1).一方,摂食亢進ペプチドであるグレリンからはレプチンとは逆に制御されている.また,POMCからはα–MSHが生成され,その軸索は,内側視索前野,室傍核,背内側核などに投射しており,α–MSHは,MC4Rを介して食欲抑制に作用する2)

 末梢組織で産生されるペプチドは,胃で産生・分泌されるグレリンが唯一の摂食亢進作用をもち,それ以外は摂食抑制に作用する3).グレリンは迷走神経求心路を抑制し,この電気シグナルが延髄孤束核に伝達され,ノルアドレナリン含有ニューロンを介して,最終的に視床下部に到達することで摂食亢進作用を示す.視床下部においては,弓状核のPOMC/CART含有ニューロンの抑制やNPY/AgRP含有ニューロンの活性化を介して摂食亢進に作用する.インスリンは,食後に血中濃度が上昇するが,血糖低下作用とともに食欲抑制作用ももつ特徴がある.作用機序としては,弓状核のPOMC/CART含有ニューロンの活性化やNPY/AgRP含有ニューロンの抑制を介して摂食抑制に働く.レプチンに関しては,前述したとおりである.CCKは消化管での過剰吸収状態下で分泌され,摂食抑制系に作用する.また,レプチンの作用を増強する働きももつ.PYYは迷走神経求心線維の電気活動を亢進し視床下部へ満腹情報を伝達し,弓状核のPOMC/CART含有ニューロンを活性化,NPY/AgRP含有ニューロンを抑制する.グルコース (ブドウ糖) は,食後に血中濃度が上昇して,視床下部に存在するグルコース受容ニューロンの活性化やグルコース感受性ニューロンの抑制により摂食抑制に作用する.

〔並川浩己・首藤太一〕

■文献

  1. Gautron L, Elmquist JK: Sixteen years and counting: an update on leptin in energy. J Clin Invest, 2011; 121: 2087–2093.

  2. Lopaschuk GD, Ussher JR, et al: Targeting intermediary metabolism in the hypothalamus as a mechanism to regulate appetite. Pharmacol Rev, 2010; 62: 237–264.

  3. Suzuki K, Simpson KA, et al: The role of gut hormones and the hypothalamus in appetite regulation. Endocr J, 2010; 57: 359–372.