ⓔコラム7-11-2 先天性トキソプラズマ症と後天性トキソプラズマ症

先天性トキソプラズマ症

 妊娠中にトキソプラズマに初感染した場合,母体が抗体をもたないため,経胎盤感染を呈することにより生じる.妊娠初期に感染した場合には多くが流産・死産の転帰をとると考えられている.中期~後期に感染した場合には,重篤な先天性障害をきたすことが多いが,そのなかでも水頭症,脳内石灰化,網脈絡膜炎,精神運動機能障害は四大徴候とよばれる.その他の症状として,リンパ節腫脹,黄疸,貧血,痙攣,肝脾腫,心筋炎などが挙げられる.

後天性トキソプラズマ症

 以下の病型に分けて考える.

ⅰ) 免疫正常者におけるトキソプラズマ症: 免疫が正常な成人・小児へ感染した場合,ほとんどが無症状である.発熱,リンパ節腫脹,筋肉痛などの症状を呈することがあるが,治療が不要な場合が多い.まれにであるが,心筋炎,多発性筋炎,肺炎,肝炎,脳炎が生じることがあるとされている.

ⅱ) 免疫不全者におけるトキソプラズマ症: エイズ患者や臓器移植患者などの免疫不全患者においては,潜伏感染していた囊子内の緩増虫体が急増虫体に変化し各臓器で分裂・増殖することで症状を呈する.トキソプラズマ脳炎の頻度が高く,頭痛,意識障害,発熱が半数近くにみられる.まれではあるが,肺炎,心筋炎,網脈絡膜炎,骨髄炎など,脳外の臓器での症状を呈することがあるため,注意が必要である.

ⅲ) 眼トキソプラズマ症: トキソプラズマによる網脈絡膜炎である.先天性では両眼性に黄斑部に近い部位に生じることが多く,視力低下,視野欠損を呈することがある.後天性の場合は,片眼性で霞目,飛蚊症などの症状を呈することがある.

〔三木田 馨〕