ⓔコラム7-12-4 糞線虫の生活史と糞線虫症の病態 (図1)

 糞線虫の生活史には寄生世代 (人体内) と自由世代 (体外) がある.寄生世代の成虫は雌のみで通常十二指腸,上部小腸に寄生し,産卵する.虫卵は孵化後ラブジチス (R) 型幼虫となり便とともに体外に排出される.体外での発育様式には2通りあり,環境の違いにより直接発育,間接発育をとる.直接発育は乾燥状態など糞線虫にとって好ましくない環境の場合に認められ,R型幼虫が脱皮して直接フィラリア (F) 型幼虫になる.一方,間接発育は高温多湿など本虫にとって最適な環境の場合に認められ,R型幼虫は雄雌の成虫になり交尾を行い産卵し,孵化後R型幼虫からF型幼虫になる.間接発育の方が直接発育よりF型幼虫の数が増加する.直接もしくは間接発育したF型幼虫は皮膚より侵入 (経皮感染) し,体内移行し,最終的に十二指腸粘膜で成虫となる.その移行経路はF型幼虫が血管やリンパ管に入り心臓を経由し肺に達し,肺胞壁の毛細血管を破り肺胞内に脱出し気管を逆行し嚥下され食道・胃を経由して十二指腸に到達し,2回脱皮して成虫になるというものである.以上が通常の糞線虫の生活史であるが,本虫には自家感染という特異な経路がある.これはR型幼虫が便とともに体外に排泄される前に,F型幼虫となり腸管もしくは肛門周囲の皮膚より再感染するという経路である.この自家感染のため感染者は長期にわたり糞線虫に感染した状態となる.

図1 糞線虫の生活史と糞線虫症の病態.

〔平田哲生〕