ⓔコラム7-12-5 過剰感染症候群

 ステロイド使用やヒトT細胞白血病ウイルス1型感染などにより宿主の免疫能が低下すると,自家感染が激しく増強し過剰感染状態となり,腸管の機能障害 (麻痺性イレウス,吸収不良症候群,蛋白漏出性腸症) や消化管出血の合併が認められるようになる.さらに自家感染が増強すると肺に移行する幼虫数が増加し,発熱,咳,喘鳴 (ぜんめい),血痰などが出現し,痰の中に幼虫が検出されるようになる.呼吸器症状の出現または痰から虫体が検出される場合は,過剰感染状態であり注意が必要である.糞線虫は自家感染の際に腸管より多量の腸内細菌を持ち込むため,敗血症,細菌性肺炎,化膿性髄膜炎を引き起こすことがある.原因微生物としては大腸菌,肺炎桿菌 (かんきん),腸球菌が多い.

 臨床検査値に関しては好酸球,IgE値の上昇が認められる場合があるが,過剰感染時には上昇しない場合が多いため,注意が必要である.

 画像所見に関しては,腹部X線検査にて小腸の拡張やイレウス像,腹部CTでは小腸の浮腫を認める (図1).十二指腸内視鏡では粘膜の浮腫,発赤,白色絨毛,管腔の狭窄などの所見を呈し (図2),生検にて糞線虫の雌成虫を認める.胸部X線検査,CTにて肺炎像,急性呼吸促迫症候群の所見を呈する場合もある.

図1 腹部造影CT. 小腸の浮腫を認める.
図2 十二指腸下行脚内視鏡像. 白色絨毛と浮腫を認める.

〔平田哲生〕