ⓔコラム7-3-12 CRE

 カルバペネム耐性肺炎桿菌はわが国では0.3%以下であるが,数十%をこえる国もある.CRE感染症の予後は不良とされており,WHOは耐性菌サーベイランスの強化は今後各国が取り組むべき重要課題としている.2014年に厚生労働省はカルバペネム耐性腸内細菌科 (CRE) による感染症をCRE感染症として感染症法に基づく感染症発生動向調査の五類全数把握疾患に追加した.腸内の常在菌の腸内細菌と区別して腸内細菌科とよぶ.CREのなかで問題なのはカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌 (carbapenemase–producing Enterobacteriae: CPE) であるが,非CPEの腸内細菌科細菌,すなわちAmpC型β–ラクタマーゼ過剰産生の腸内細菌科細菌やポーリンの減少や欠失といった外膜の変化した腸内細菌科細菌であっても厚生労働省の基準を満たす.一方でCPEであってもCREの基準を満たさないものも多く,CPEの耐性遺伝子はプラスミド伝播し,患者の腸内で異なった菌種に接合により伝播するため異なった菌種でも水平伝播の可能性が否定できない.したがって感受性のみではCPEの判断は困難で,カルバペネマーゼ産生菌を検出するためCIM法 (carbapenemase inactivation method test) や変法Hodge法などを実施し,可能であれば耐性遺伝子を確認することが望ましい.わが国のCREについては大腸菌,肺炎桿菌およびK. oxytocaのIMP産生株の報告が多く,ADLの低下した患者では高率で保菌していたという報告もある.海外で多いKPC型,NDM型,OXA48型などのカルバペネマーゼ産生菌は日本ではまれであるが,海外で濃厚な医療を受けてきた患者の受け入れ時にはこれらを産生するCPE保菌を疑い,保菌が否定されるまで隔離対応することが必要と考えられる.

 CREのほとんどはESBLを同時産生しているためモノバクタム系を含めすべてのβ–ラクタム系薬に耐性であり,アミノグリコシド,コリスチンやチゲサイクリンなど感受性の抗菌薬は限定される.またこれらを単独で使用するのでなく,高度耐性でないカルバペネムとほかのCREに感受性を有する抗菌薬との併用が効果的という報告や,感受性をみたうえでの個別対応が必要との報告もあり,治療法は確立していない.

〔浮村 聡〕