ⓔコラム7-3-2 東日本大震災と破傷風発生

 破傷風は地震,洪水,津波など外傷を負う人が多く出る大規模災害において,最も警戒すべき感染症の1つである.2004年のインドネシア・スマトラ島沖地震,2010年のハイチ地震などでは多数の患者が報告された.わが国でも2011年3月11日に発生した東日本大震災では,津波により多くの受傷者と死亡者が報告され,そのなかで,震災に関連する破傷風患者の報告が,2011年3月〜4月の1カ月間に岩手県,宮城県から10例発生した.2011年の破傷風の年間の発生数は118例で,過去5年間の報告数 (89〜123/年) と比較して大きな影響は認めなかった.しかし宮城県においては,過去5年間の報告数が1〜4/年であるのに対して10例発生していて,特に震災直後1カ月で8例発生しており,その関連は明らかである.被災地では沈降破傷風トキソイドや抗破傷風免疫グロブリン (TIG) の供給が間に合わず,また受傷後の開創も遅れる事例が多くなり,破傷風発症の危険度が高くなる.被災後に衛生的な環境を保ちにくい地域では,さらに危険度が増すであろう.被災地医療においては,破傷風対策としてより適切な創処置,予防,診断,治療が必要である.

〔竹村 弘〕