ⓔコラム8-2-2 Rhoキナーゼ阻害薬の作用機序

 Rhoが活性化したラット高血圧モデルにRhoキナーゼ阻害薬を投与すると,著明な降圧がみられることから,高血圧の病態にRhoが大きくかかわっているのは間違いない.また,ブタモデルやヒトにおいてRhoキナーゼ阻害薬が著明な冠スパズム (攣縮) 抑制効果を有することから,冠攣縮の病態にもRhoが大きくかかわっているのは間違いない.以前からくも膜下出血発症後の脳動脈攣縮抑制に用いられてきたファスジルという薬物が実はRhoキナーゼ阻害薬であったことが明らかになり,Rhoキナーゼ阻害薬は血管攣縮部位におけるミオシン軽鎖のリン酸化を抑制することが明らかになった.これらから,血管の弛緩にはRho/Rhoキナーゼシグナルが大きくかかわっているといえ,ミオシン軽鎖のリン酸化および脱リン酸化といったシグナル伝達バランスが何かの原因で失われると,生体の恒常性 (ホメオスターシス) を乱すような血管収縮や血管弛緩が起こってしまう.

〔加藤 徹・野出孝一〕