ⓔコラム8-3-2 動脈硬化病変における血管新生

 血管外膜には微小血管 (vasa vasorum: VV) が存在し,正常な状態の血管では,血管内腔からの拡散では届かない血管中膜外側へ酸素や栄養分を供給している.動脈硬化病変では病変拡大に伴い血管外膜VVが増殖して血管外膜・血管中膜を貫通してプラーク内に侵入し,プラーク内微小血管となる1).プラーク内に侵入したVVは,炎症細胞や脂質を外膜側から病変内に送り込む導管となるほか,侵入する際に血管組織を融解して脆弱化させる.VV自体も周皮細胞を伴わず脆弱で破綻しやすく,プラーク内で出血してプラークを拡大させ,プラーク破裂の誘因となる.ヒトの剖検検体でさまざまな進展段階のプラーク病変を組織学的に観察すると,プラーク内微小血管密度の亢進は,炎症細胞浸潤,プラーク内出血,線維性被膜の菲薄化と相関していたと報告されている2)(図1).

図1 動脈硬化病変と血管外膜微小血管. 正常な動脈では血管外膜微小血管は血管中膜の外側の栄養血管として機能する.動脈硬化病変では外膜微小血管は増殖して動脈硬化病変内に侵入し,病変内と外膜側とを交通する導管となるほか,プラーク内出血を生じ病変を不安定化させる.

〔田中君枝・佐田政隆〕

■文献

  1. Barger AC, Beeuwkes R 3rd, et al: Hypothesis: vasa vasorum and neovascularization of human coronary arteries. A possible role in the pathophysiology of atherosclerosis. N Engl J Med, 1984; 310: 175–177.

  2. Moreno PR, Purushothaman KR, et al: Plaque neovascularization is increased in ruptured atherosclerotic lesions of human aorta: implications for plaque vulnerability. Circulation, 2004; 110: 2032–2038.