ⓔコラム8-5-8 心臓カテーテル検査の新たな展開

 心臓カテーテル検査は末梢動脈あるいは末梢静脈から心腔,大血管あるいは冠動脈へカテーテルやワイヤーを挿入することによりなされる.近年の心エコー検査,冠動脈CT検査,心臓MRI検査,心臓核医学検査などの画像診断法の進歩はめざましく,非侵襲的に心機能,構造に関する詳細な情報が得られるようになった.このため,以前と比べ侵襲的な心臓カテーテル検査の意義は薄れつつあるが,心臓カテーテル検査が心血管系の構造と病態生理を評価する際に最も信頼できる検査であり,また,治療に直結する検査であることに変わりはない.現在,日本では診断的心臓カテーテル検査は年間50万件以上実施されている.

 心臓カテーテル検査の新たな展開として,カテーテルやガイドワイヤーの素材と性能の向上があり,低侵襲で患者負担が少ない橈骨動脈アプローチの普及が挙げられる.また,冠動脈造影と同時に行われる冠動脈イメージングやプレッシャーワイヤーによる冠血流予備能比 (FFR) の測定は,冠動脈プラーク性状評価,心筋虚血評価,ならびに経皮的冠動脈インターベンション (percutaneous coronary intervention: PCI) の治療方針決定などに決定的な役割を果たす.

〔谷本貴志・赤阪隆史〕