ⓔコラム8-6-1 心室頻拍各論

特発性右室流出路起源心室頻拍1,2)

 右室流出路付近を起源とする特発性心室頻拍で,心電図では左脚ブロック型の下方軸偏位を示す (図1A).多くは非持続性を呈し,撃発活動が発生機序と考えられる.同一起源の心室期外収縮と混在するため,心室期外収縮の延長線上にある心室頻拍ととらえてよい.ほとんどが良性であるが,反復性に繰り返すと激しい動悸 (心悸亢進) を訴え,心拍数が速いときは失神に至る.また,きわめてまれであるが,心室細動へ移行することもある (特発性心室細動の項参照).抗不整脈薬に抵抗性を示すことが多く,カテーテルアブレーションが有効である.

特発性ベラパミル感受性心室頻拍1,3)

 左室の左脚後枝 (まれに前枝) に関連して発生するリエントリー性心室頻拍であり,持続性単形性を示す.その停止にはベラパミル静注がきわめて有効であり,リエントリー回路の伝導遅延部位がカルシウムチャネルによって脱分極していると考えられる.Purkinjeに連結するため,比較的狭い右脚ブロック型のQRS幅を呈し,後枝起源では上方軸,前枝起源では下方軸偏位となる (図1B).若い男性に多く,生命予後は良好であり,突然死はない.発作が頻発する場合はカテーテルアブレーションが有効である.

図1 特発性心室頻拍の代表例. A:特発性右室流出路起源心室頻拍.右室流出路付近を起源とする特発性心室頻拍で,心電図では左脚ブロック型の下方軸偏位を示す.多くは非持続性を呈し,撃発活動が発生機序と考えられる.同一起源の心室期外収縮と混在するため,心室期外収縮の延長線上にある心室頻拍ととらえてよい. B:特発性ベラパミル感受性心室頻拍.左室の左脚後枝 (まれに前枝) に関連して発生するリエントリー性心室頻拍であり,持続性単形性を示す.その停止にはベラパミル静注がきわめて有効であり,リエントリー回路の伝導遅延部位がカルシウムチャネルによって脱分極していると考えられる.比較的狭い右脚ブロック型のQRS幅を呈し,後枝起源では上方軸,前枝起源では下方軸偏位となる.

瘢痕関連性持続性単形性頻拍1)

 拡張型心筋症,陳旧性心筋梗塞,不整脈原性右室心筋症などに起因するもので,瘢痕 (はんこん) 化した心室筋に関連した伝導遅延部位がリエントリー回路の形成に関与し,持続性単形性のパターンを示す.この遅延伝導部位はナトリウムチャネルによって脱分極しており,電気生理検査では分裂電位として記録される.左室機能が不良な患者では突然死のリスクがあり,ICDの適応が基本になる.発作の予防にはⅢ群薬の併用,カテーテルアブレーションなどが行われる.

torsade de pointes 1,4)

 過剰なQT延長 (QT延長症候群) はその原因を問わず多形性心室頻拍 (torsade de pointes: TdP) を招来する (本文図8-6-30).幼児 (若年者) での発症は先天性,高齢者での発症は後天性の原因を考える.TdPは自然停止することが多いが,その10%程度が心室細動へ移行し,突然死のリスクが高い.先天性QT延長症候群の多くはイオンチャネルをコードする遺伝子解析によって,LQT 1~3に分類され,カリウムチャネルの異常に起因するLQT 1~2のTdPは交感神経の緊張によって誘発されるため,β遮断薬が第一選択薬となる.LQT 3はナトリウムチャネル異常に起因する特異な病態を示し,β遮断薬は無効で,メキシレチンなどのナトリウムチャネル抑制薬が有効である.後天性QT延長症候群の原因としては抗不整脈薬 (Ⅰa群,Ⅲ群),徐脈,低カリウム血症,マクロライド系抗菌薬などがあり,急性期 (発作時) の治療は硫酸マグネシウムの静注が有効である.後天性QT延長症候群では原因の除去が最も重要であり,原因となった薬剤の中止,徐脈が原因の場合は人工ペースメーカによる心拍数の維持 (70拍/分以上) によって治療できる.頻拍の原因であるQT延長を見逃し,Ⅰa群薬やⅢ群薬を投与する愚を重ねると,病状が悪化の一途をたどる.したがって,多形性心室頻拍を認めた場合はQT延長によるTdPを念頭において発作前後の心電図所見を正しく解析する必要がある.

カテコールアミン誘発性多形性心室頻拍5,6)

 運動や情動ストレスなど,カテコールアミンが分泌される環境が誘因となって発生する心室頻拍である.失神を主訴とし,10歳前後に発症する.QTの延長や基礎心疾患の合併はなく,サルコレンマから放出されるカルシウムをコントロールするリアノジン受容体の遺伝子異常が報告されている.頻拍中に数種類のQRSが交互に記録されるのが特徴であり,2方向性心室頻拍ともよばれる.この頻拍は心室細動へ移行しやすいため,突然死のリスクが高く,ICDが適用される (図2).しかし,ICDの作動が頻回となることがあり,補助的治療としてβ遮断薬やⅠc群薬剤が用いられる.

図2 カテコールアミン誘発性多形性心室頻拍. A:運動負荷中に認められた心室頻拍.数種類のQRSが観察される. B:Aの後に認められた2方向性心室頻拍.2種類のQRSが交互に出現する特徴的な心室頻拍である. C:2方向性心室頻拍後に発生した心室細動.カテコールアミン誘発性多形性心室頻拍はこのような心室細動により突然死に至る危険性が高い.

〔栗田隆志〕

■文献

  1. 大江 透:心室性不整脈.不整脈―ベッドサイド診断から非薬物治療まで,医学書院,2007; 317–417.

  2. 中野恵美,多田 浩:流出路起源心室頻拍.不整脈学,井上 博,村川裕二編,南江堂,2012; 481–449.

  3. 野上昭彦:左室起源の特発性心室頻拍.不整脈学,井上 博,村川裕二編,南江堂,2012; 473–480.

  4. Zareba W, Moss AJ, et al, for the International Long–QT Syndrome Registry Research Group: Influence of the genotype on the clinical course of the long–QT syndrome. N Engl J Med, 1998; 339: 960–965.

  5. Priori SG, Napolitano C, et al: Mutations in the cardiac ryanodine receptor gene (hRyR2) underlie catecholaminergic polymorphic ventricular tachycardia. Circulation, 2001; 103: 196–200.

  6. 住吉正孝:カテコラミン誘発多形性心室頻拍.不整脈学,井上 博,村川裕二編,南江堂,2012; 511–516.