ⓔコラム9-2-2 心エコーにおける拡張機能低下所見

 左室拡張機能評価は,2016年米国心エコー図学会 (ASE) と欧州心血管画像学会 (EACVI) が勧告したガイドラインに基づいて行うのが一般的である.「LVEFが正常な患者における左室拡張機能障害の診断」 (図1) と「LVEFが低下した患者および心筋に異常を有するLVEFが正常な患者における左室充満圧の推定および左室拡張機能の重症度判定」 (図2) の2つのアルゴリズムを用いる.評価する指標は,左室弛緩能の指標であるe´(中隔側および側壁側) と,左室充満圧の指標である平均E/e´,三尖弁逆流速度 (TR velocity),左房容積係数 (LAVI),左室流入血流速波形のE/AおよびE波の流速である (図3).これらを組み合わせることによって,左室拡張機能障害の有無や程度,左室充満圧上昇の有無を総合的に判定する.しかし,心房細動や左右シャント疾患,肺塞栓や肺高血圧などを合併すると信頼性が低下するので注意が必要である.

図1 左室拡張不全の存在判断のアルゴリズム.
図2 左室充満圧・拡張能推定のアルゴリズム (EF低下例・EF正常の心筋疾患例).
図3 左室拡張能・充満圧評価アルゴリズムで中心となる測定項目.

〔加藤 徹・野出孝一〕