ⓔノート12-6-1 ADH系,MEOS,カタラーゼ系

ADH系

 ADH系はアルコール代謝に最も大きな寄与をなす代謝経路である.ADHによる代謝過程で補酵素NAD (nicotinamide adenine dinucleotide) はNADH (dihydronicotinamide adenine dinucleotide) に還元される.その結果,細胞内のNADH/NAD比が上昇し,このレドックスシフトはNADあるいはNADH依存性の代謝動態を変化させ,代謝異常,臓器障害発症の基盤となる.

MEOS

 肝マイクロソームにてNADPH依存性のチトクロームP450 (cytochrome P450: CYP) 2E1を介しアルコールを酸化する経路である.本系が作動する際,活性酸素種 (ROS) が生じる.MEOS系はADH系に比しKmが高いこと,慢性飲酒により著明な酵素活性の誘導が起こることより,慢性大量飲酒下ではアルコール酸化への寄与が大きくなるとともに酸化ストレス源として重要である.

カタラーゼ系

 ペルオキシゾームに存在するカタラーゼは,H2O2の存在下でアルコールをアセトアルデヒドに代謝する.とりわけ脂質の過剰摂取はペルオキシゾームでのβ酸化亢進とH2O2の大量産生を招き,本酵素によるアルコール代謝が活性化する.

〔竹井謙之〕