ⓔノート16-1-2 食物の消化・吸収

 ヒトは食物を視覚,嗅覚で認知し口腔で受容するとともに食事内容物が胃に移行すると,その伸展および化学的刺激により副交感神経が活性化され,胃酸分泌やインスリン分泌が起こる1).これらの分泌を起こす副交感神経伝達物質はアセチルコリン,PACAPなどである.内容物が胃の幽門部で受容されるとガストリンが放出され,ガストリンとアセチルコリン,ヒスタミンの作用により壁細胞より胃酸が分泌される.胃酸は蛋白質を変性させペプシンによる分解を促進し,食事内容物の殺菌作用も担う.内容物が適切な軟度と濃度に達すると胃から十二指腸へ移行し十二指腸粘膜上皮からセクレチンが血中に分泌される.セクレチンは膵液成分を十二指腸内に放出し内容物を中和させる.同時に内容物中の脂肪,ペプトン (蛋白質の中間消化産物) 成分によりコレシストキニンが血中に放出される.コレシストキニンは,消化酵素に富む膵液を十二指腸に放出させ,胆汁は十二指腸に放出される.糖質,蛋白質は膵液で加水分解ののちに消化され単糖,アミノ酸となり小腸上部で吸収される.一方,脂肪は膵液と胆汁で加水分解され脂肪酸,グリセロール,コレステロールとなり小腸下部から吸収される.アルコールだけは例外的に胃から吸収される.

〔窪田直人〕

■文献

  1. 香川靖雄,近藤和雄,他編:栄養と代謝にかかわるホルモン.人体の構造と機能及び疾病の成り立ち 各論Ⅰ,南江堂,2008; 9–11.