ⓔノート2-1-5 体温調節

 体内では生命維持のために行われるあらゆる代謝活動に際して副次的に作り出される熱に加え,身体行動に伴う肉体運動によっても筋肉から大量の熱が発生する.寒冷環境では,その熱を体外に失わないように体表血管を収縮させ,骨格筋のふるえ (shivering) や褐色脂肪細胞の燃焼によって熱を新たに作り出し (自律性体温調節反応),衣服を一枚余分に羽織ったり,屋内へ逃げ込んだりする (行動性体温調節反応).一方,暑熱環境では,体表血管を拡張させ,汗をかき (自律性体温調節反応),日射を避け,水をかぶったり飲んだり,風に当たったりする (行動性体温調節反応).恒温動物であるヒトの体温調節中枢は,視床下部の視索前野にあるとされ,体表の温度知覚受容器から送られる情報をもとに,深部体温 (中心温,芯温ともいう) は37.5℃近辺に厳密に制御され,体内の酵素が最も効率よく働くための最適な体内環境を維持している.

〔三宅康史〕