ⓔノート7-10-18 ポリオの疫学

 1988年に世界保健機関 (World Health Organization: WHO) は世界ポリオ根絶計画を提唱し,以来ポリオ症例数および流行地域は次第に減少した.2型野生株ポリオウイルス (WPV) は,1999年のインドの症例を最後に終息し,2015年9月,2型WPV根絶を宣言した.3型WPVによるポリオ症例は,2012年のナイジェリアの症例以降報告されていない.したがって,WPV 1~3型のうち現在も伝播が継続しているのは1型のみである.現在残されたWPV流行国は,ナイジェリア,パキスタンおよびアフガニスタンの3カ国である.野生株によるポリオは,1988年以来99%以上減少し,年に35万人の発症から,2018年は33例にまで減少させることに成功したが,2019年には113例にまで再増加しており,このことにWHOは警告を発している1–3).前述した野生株の流行を認める3カ国以外に,cVDPV1の流行を認める4カ国 (インドネシア,マレーシア,ミャンマー,フィリピン) とcVDPV2の流行を認める18カ国の政府に対して,有効な対策を実施するように勧告している.

〔城 裕之〕

■文献

  1. 国立感染症研究所: ポリオ 2016年現在.IASR, 2016; 37: 17–18.

  2. WHO: Poliomyelitis Key facts. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/poliomyelitis.2019.

  3. WHO: Statement of the Twenty–Third IHR Emergency Committee Regarding the International Spread of Poliovirus. https://www.who.int/news/item/07-01-2020-statement-o-the-twenty-third-ihr-emergency-committee-regarding-the-international-spread-of-poliovirus.2020.