ⓔノート7-10-19 ポリオの病態生理

 おもな感染様式は接触感染である.感染者の便には3~6週間ウイルスが排泄され,手指を介して糞口感染する.症状出現後1~2週間までは咽頭にもウイルスが検出されるために飛沫感染を起こすこともある1)

 体内に摂取されたポリオウイルスは,腸管内で増殖し,軽度のウイルス血症を生じて,全身の網内系に播種される.多くの場合は無症候性で終わり抗体が産生される.一部の感染者では,多量のウイルス血症を生じ,中枢神経系の灰白質に感染し炎症を生じて,神経細胞が破壊され神経症状が出現する.ポリオウイルスはおもに運動ニューロンと自律神経系ニューロンを障害するが,知覚ニューロンは障害しない.障害される部位は脊髄前角の灰白質〜橋・延髄の運動核に及ぶ.臨床症状は障害の部位よりも障害の程度に影響される.ポリオウイルスは,麻痺発症後2〜3日間のみ脊髄から分離されるが,炎症は数カ月間にわたり持続することもある2)

〔城 裕之〕

■文献

  1. 日本感染症学会:感染症クイック・リファンレス 68.ポリオ (急性灰白髄炎).https://www.kansensho.or.jp/ref/d68.html.2019.

  2. Romero JR: Poliovirus. Mandell, Douglas, and Benett’s Prinncples and Practice of Infectious Diseases, 9th ed (Benett JE, Dolin R, et al eds), Elsevier, 2020; 2020–2026.