ⓔノート7-2-1 常在菌叢の薬物耐性化

 常在菌叢の薬物耐性化は治療薬選択に影響を及ぼす.大腸菌に占める基質拡張型β–ラクタマーゼ (extended–spectrum β–lactamase: ESBL) 産生菌の頻度は,わが国において2010年以降上昇傾向にあり,現在25%前後に至っている.従来,二次性腹膜炎ではカルバペネム系薬を選択すれば,好気性菌と嫌気性菌の両者のほとんどに有効性が期待できたが,カルバペネム分解酵素産生菌が世界中で報告されるようになった.またキノロン耐性大腸菌の頻度も高く,市中感染の際に注意が必要である.加えて腹腔内感染症発症時点ですでに抗菌薬の投与が行われている場合や,入院などにより薬物耐性菌が伝播されている場合もある.

〔大毛宏喜〕