ⓔノート7-3-3　原因となる食材

　リステリア感染症はおもに経口感染し，わが国の食中毒統計ではリステリアによる食中毒の報告例はないが，罹患率は年間1.06～1.57/100万人で，3/4が高齢者であると推定されている1)．特に注意すべき食材としてナチュラルチーズ，生ハム，肉や魚のパテ，スモークサーモンなどが挙げられるが，海外ではほかにサラダ，カンタロープメロン，スプラウト，キャラメルアップル，冷凍食品などさまざまな食材によるアウトブレイクが報告されている2)．わが国の調査でも低率ではあるものの，ナチュラルチーズや非加熱食肉製品，魚卵塩蔵品，スモークサーモンなどの喫食前に加熱を要さない調理済み食品 (ready–to–eat食品) からL. monocytogenesが分離されることが報告されており，免疫能低下者や妊婦ではこれらの食品には十分な注意が必要である3,4)．

〔堀野哲也〕

■文献

  1. 山根一和，鈴木里和，他：厚生労働省院内感染対策サーベイランス検査部門データを用いた本邦におけるリステリア症罹患率の推定．病原微生物検出情報，2012; 33: 247–248.

  2. Desai AN, Anyoha A, et al: Changing epidemiology of Listeria monocytogenes outbreaks, sporadic cases, and recalls globally: A review of ProMED reports from 1996 to 2018. Int J Infect Dis, 2019; 84, 48–53.

  3. Shimojima Y, Ida M, et al: Prevalence and contamination levels of Listeria monocytogenes in ready–to–eat foods in Tokyo, Japan. J Vet Med Sci, 2016; 78: 1183–1187.

  4. 下島優香子，井田美樹，他：食品からのListeria monocytogenes検出法および定量法の比較．日食微生物会誌，2016; 33: 155–159.