ⓔ図17-7-6 DNAメチル化 DNAメチル化はDNAメチルトランスフェラーゼ (DNMT) によりCpGジヌクレオチドのシトシンの5位炭素原子にメチル基が付加される反応である.メチル化によって遺伝子の転写活性が抑制される.DNAメチル化酵素阻害薬としてアザシチジン (azacitidine: AZA) とデシタビン (decitabine: DAC) が臨床応用されているが,わが国ではDACの保険承認は得られていない.DACとAZAはともにシトシンアナログ製剤の1つである.細胞内に取り込まれたDACはリン酸化され,DNAに取り込まれる.DNAに取り込まれたDACはDNAメチル化酵素と結合することにより酵素活性を低下させる.その結果DNAのメチル化レベルが低下する.AZAはリン酸化を受けた後,主としてRNAに取り込まれるが,その中間産物が還元化を受けることによりDACとなり,DNAに取り込まれる.したがって,DACはAZAに比べて約10倍高いDNAメチル化酵素阻害活性を有するとされている.一方,低濃度における殺細胞効果は逆にAZAの方がDACよりも強く,RNAへの取り込みが殺細胞効果に関与していると考えられている.
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