ⓔ図8-5-21 症例1:60歳代男性,糖尿病の教育入院時の胸部単純X線写真  まず目につくのは下行大動脈の蛇行であるが,その上方,いわゆる左第1弓の陰影が成人男性にしては奇妙に小さい (B).また気管右側の陰影が通常より幅広く,白くみえる (B*).よくみると気管は左に若干圧排されている.側面像では気管が前方に圧排されている (C矢印).CTが撮影され,異所性左鎖骨下動脈を伴う右側大動脈弓と診断された (D).  胎生期において腹側大動脈と左右1対の背側大動脈を結ぶ左右6対の大動脈弓が生じ,これらが退縮していくことで大動脈および腕頭動脈,総頸動脈,鎖骨下動脈が形成される.正常では左第4大動脈弓と左背側大動脈が大動脈弓になるが,左側が退縮し右側が遺残すると右側大動脈弓になる.右側大動脈弓では本症例のように左鎖骨下動脈が大動脈弓遠位から分岐し,気管・食道の背側を通るタイプが最も多く,血管輪による症状を呈することがある.対して弓部の血管分岐が正常の左大動脈弓と鏡像であるタイプ (左腕頭動脈,右総頸動脈,右鎖骨下動脈の順に分岐するタイプ) では先天性心疾患を合併することが知られている.本症例でみられた気管の変位は異所性左鎖骨下動脈によるものであった.気管の変位や狭窄は悪性腫瘍や甲状腺腫などで起こることもあり見逃さないようにしたい.
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