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内容紹介
現代日本を代表する特色ある文化でありコンテンツ産業であるアニメーションについて,体系的に論じた初の総合事典。アニメーションを関連諸分野から多角的に捉え,総合的に記述することによって「アニメーション学」を確立する。〔内容〕アニメーション研究の範疇と方法/アニメーションの歴史(日本編,アジア編,ヨーロッパ編,アメリカ編,その他諸国編)/文化としてのアニメーション/サブカルチャー/日本の教育における映像利用/専門教育/キャラクターの心理学/他
編集部から
本書を推薦します(五十音順・敬称略)
〇大山 正
前 アニメーション学会会長
前 東京大学・日本大学教授
現在、日本のアニメーションは全世界に普及し多くの人々を魅了している。高畑勲監督が指摘しているようにわが国には12世紀の絵巻物から始まる映像文化の長い伝統がある。また、色や形や動きがあたえる感情や象徴性は、民族を超え、文化を超えて、人々に共感を与えることは、心理学的研究からも確かめられている。アニメーションは科学的、学術的研究の対象となっている。この時期に日本アニメーション学会メンバーをあげて「アニメーションの事典」を完成させたことは快挙と言えよう。アニメーションに関心を持つ広い読者に本事典を推薦したい。
〇濵野 保樹
東京工科大学教授
前 東京大学教授
学問としての体系を確立し、教育研究を科学的なものとするためには、これまでの研究成果や知見を網羅的に俯瞰できるものが必要であった。それは、日本のアニメーションが果たしてきた経緯からしても、わが国が先導すべきものであるはずだ。「アニメーションの事典」は、その使命に応えるべくして編まれた成果である。
〇古川 タク
日本アニメーション協会会長
東京工芸大学客員教授
わが国でのアニメーション事情についての素朴な疑問や質問を内外の方々から問われる機会が多々あって、その度に学問的な著作物を紹介しろと言われて困っていました。作家とその作品を歴史的に紹介するものはありましたが、まだまだ研究分野はこれからなのかと思っていました。ですか
らこの事典の登場には大いに期待しています。
ぜひ近々に英語版をはじめとする海外版も実現して欲しいと願います。
目次
第I部 解説・展望編
1.総論
1.1 アニメーション研究:学問としてのアニメーション
1.2 アニメーション研究の範疇と方法
2.原論
2.1 アニメーションの概念
2.2 アニメーションの特質
2.3 アニメーションの形式・内容
3.歴史
3.1 アニメーション史概観
3.2 アニメーションの歴史:日本編
3.3 アニメーションの歴史:アジア編
3.4 アニメーションの歴史:ヨーロッパ編
3.5 アニメーションの歴史:アメリカ編
3.6 アニメーションの歴史:その他諸国編
4.技術・表現
4.1 アニメーションの制作:セル・セルライクなど描画アニメーション
4.2 アニメーション撮影について
4.3 立体アニメーション
4.4 デジタル・アニメーション
5.文化・芸術
5.1 文化としてのアニメーション
5.2 文化産業としてのアニメーション
6.産業
6.1 アニメーション産業
6.2 アニメーションの事業活動
6.3 アニメーションと著作権
6.4 アニメーションと産業政策
7.社会
7.1 アニメーションと社会:『ゲゲゲの鬼太郎』の場合
7.2 アニメーションとマス・メディア
7.3 アニメーション文化の世界
7.4 時代のトレンドとしてのアニメーション
7.5 サブカルチャーとしてのアニメーション
8.教育
8.1 映像の教育利用の歴史
8.2 日本の教育におけるアニメーション
8.3 日本の教育における映像利用:マルチメディアから漫画まで
8.4 アニメーションの教育理論
8.5 アニメーションの専門教育
8.6 アニメーションと教育
9.心理学
9.1 アニメーションが動いて見える原理
9.2 アニメーションと形態・色彩心理学
9.3 キャラクターの心理学
9.4 アニメーションと発達心理学(1):幼児・児童向けアニメーション
9.5 アニメーションと発達心理学(2):子ども向けアニメーション
9.6 友情と恋愛のアニメーション
9.7 性愛・暴力とアニメーション
9.8 アニメーションと社会心理学
9.9 アニメーションと環境心理学
9.10 アニメーションと人格心理学
9.11 アニメーションと臨床心理学
9.12 アニメーションと創造性
第Ⅱ部 研究編
1.原論
1.1 映像としてのアニメーション
2.歴史研究
2.1 アニメーション映画の精神史に向けて
2.2 第二次世界大戦後のアニメーション産業界─東映動画設立前後を中心に
2.3 アフリカのアニメーション
3.作家論
3.1 森 康二:平和を祈念したアニメーター
3.2 川本喜八郎:詩を語るアニメーション作家
3.3 今 敏のアニメーションにおける停滞する悪意:成人期危機と中年期危機
3.4 エイゼンシュテインのディズニー論
4.作品論
4.1 大藤信郎『蛙三勇士』論:軍国美談とモダニズム
4.2 石森章太郎とアニメーション作品についての一考察:「幽霊船」と「空飛ぶゆうれい船」
5.技術論・表現論
5.1 アニメーションの技術開発:東映動画の技術開発(1960-1985)
6.文化論
6.1 アニメーションとアニミズム
6.2 アニメーションにおける「運動=生/魂」の現象とヒューマニズムとの関係に関する考察
6.3 韓国における宮崎駿作品の受容
7.社会論
7.1 社会メディアとしてのアニメーション:ポケモン事件とその対応
8.教育論
8.1 アニメーションの教育論
8.2 教育普及活動でのワークショップとアニメーションの専門教育
9.心理学的研究
9.1 アニメーションにおける「動き」表現の検討
9.2 バイオロジカル・モーション
第Ⅲ部 資料編
1.用語集
2.人名解説
3.文献一覧
4.本文中アニメーション関連文献集
5.学会誌『アニメーション研究』論文一覧
執筆者紹介
編集者(刊行時)
横田正夫 日本大学文理学部心理学科教授 (編集委員長)
小出正志 東京造形大学アニメーション専攻領域教授
池田 宏 前 東京工芸大学アニメーション学科教授