HPVワクチンのはなし ―効果は? リスクは? なぜ問題になったの? 素朴な疑問に答えます―

片野田 耕太江川 長靖(著)

片野田 耕太江川 長靖(著)

定価 2,970 円(本体 2,700 円+税)

A5判/148ページ
刊行日:2025年11月01日
ISBN:978-4-254-10311-3 C3040

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内容紹介

HPVワクチン問題について,背景や経緯をできるだけ客観的に,医学・社会・政治的な側面を含めて解説.読者が自分なりに納得したうえで判断できることを目指し,信頼性の高い情報をわかりやすくまとめた1冊.〔内容〕HPVワクチンって?/どんな効果・リスクがあるの?/HPVワクチンをめぐる論争/なぜ問題がこじれるのか他

編集部から

はじめに

 「HPVワクチン」,この言葉を聞いてどのようなイメージを持たれるでしょうか。正式名称は「ヒト・パピローマウイルス・ワクチン」,かつては「子宮頸がんワクチン」と呼ばれていました。「怖い」,「もめている」というイメージでしょうか。お子さんがいらっしゃる方で子どもに打たせようか迷っている,ご自身が接種するかどうか迷っているという方も多いでしょう。男性の中には自分とは関係ないと思っている方もいるでしょうか。医療者であれば,大事なワクチンなのに普及していないのをもどかしく思っている方が多いと思います。HPVワクチンをめぐっては,賛成,反対の双方からいろいろな情報が出回っていて,混乱している方も多いでしょう。本書は,HPVワクチンとは何か,どのような経緯で社会問題になったのか,なぜこんなにもこじれてしまったのかについて,できるだけ事実に基づいて解説したものです。
 まず序章の「HPVワクチン問題とは?」で,副反応疑い報道に端を発したこの問題の経緯について簡単に紹介します。次の第1章では,「HPVワクチンってどのようなワクチン?」と題して,HPVがどのようなウイルスで,どのような経路で感染し,どのような過程を経て子宮頸がんなどの病気になるのか,そしてHPVワクチンがどうやって効くのかについて,医学的な解説を中心にしています。やや理系寄りの説明で,社会問題としてのHPVワクチンとは直接関係はありませんが,HPVとHPVワクチンそのものの性質が論争の的となっていることがあるため,あえて最初にこの章を設けました。次の第2章「HPVワクチンにどのような効果があるの?」では,HPVワクチンのメリット,つまりHPVワクチンの予防効果について解説します。続く第3章「HPVワクチンにどのようなリスクがあるの?」では,HPVワクチンのデメリット,つまりHPVワクチンの副反応と考えられるリスクについて解説します。広く報道された「副反応疑い」についてはこの第3章で詳しく紹介しています。そして第4章「HPVワクチンをめぐる論争」では,HPVワクチンの行政,研究,裁判において繰り広げられてきた議論と論争について解説します。続く第5章「どうしてHPVワクチン問題はこじれるの?」では,HPVワクチン問題がなぜここまで泥沼化したかについて,新型コロナワクチンとの比較や社会的背景を含めて考察します。最後の第6章「HPVワクチンのこれから」では,HPVワクチン問題を踏まえて,社会としてワクチンとどう向き合っていくかについて考えます。
 なお,本書はHPVワクチンの効果について肯定する立場をとっています。安全性については,一定の副反応リスクがあることを認めつつも公衆衛生上のメリットがデメリットを上回るという立場をとっています。その上で,HPVワクチン問題をめぐるさまざまな出来事を可能な限り客観的に整理し,いろいろな観点から考察することを試みました。私自身は医師ではなく,医療資格を持っているわけではありません。がんの疫学(病気の原因を集団レベルで調べる学問)に約20年間携わってきた経験から本書を執筆し,HPVやワクチンの専門的な部分については執筆協力の江川長靖先生にご助言をいただきました。どの章から読んでいただいても理解ができるような構成になっていますが,医学的な問題と社会的な問題とがからみあっているのがHPVワクチンの特徴です。ぜひ最初の章からお読みになって,HPVとHPVワクチンの理解を深めてから複雑な社会問題へと進んでいただければと思います。
 
2025年10月
片野田耕太

目次

はじめに
序章 HPVワクチン問題とは何か?
第1章 HPVワクチンってどのようなワクチン?
第2章 HPVワクチンにどのような効果があるの?
第3章 HPVワクチンにどのようなリスクがあるの?
第4章 HPVワクチンをめぐる論争
第5章 なぜHPVワクチン問題はこじれるのか?
第6章 HPVワクチンのこれから
付録 HPVワクチンに関する年表
おわりに
索引

執筆者紹介

片野田耕太(著) 国立がん研究センターがん対策研究所データサイエンス研究部
江川 長靖(執筆協力) ケンブリッジ大学病理学部

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